巡り出会い
□…食事.ファミレスにて
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「帝人君決まった?」
「あ、はい」
帝人と臨也は今現在駅前のファミレスにいる。丁度昼間のピークを過ぎた位の客がまばらの時間帯だ。何故この二人がこのような場所で仲良く昼食を供にしているかというと、話は少し前にさかのぼる。
臨也と帝人は知り合ってから数週間、情報提供のためと交換したアドレスでたまに連絡し合ったり、臨也が帝人の家を訪ねたりしていた。
といっても、話すことは殆ど世間話状態で、10年前の男の人探しは何の進展もなかった。仕方がない事だと臨也は思う。なぜなら帝人が何かしら思い出さなければ始まらないからだ。
ならば別に連絡したり会ったりすることもないだろうが、今回は少しだけ状況が違った。
正直の所、臨也は帝人との世間話を割と楽しんでもいた。
最初は何ともよそよそしかった帝人だが、慣れてくるとかなり毒舌らしい事が分かってきて、頭の回転も早いようだから臨也の言葉に鋭く突っ込みを入れてくるのだ。
そして何より、帝人の話すテンポや雰囲気がかなり好みだった。臨也がそんな風に感じる人間はなかなかいない。今まで会ったこともないタイプだった。
だからか、何の進展も無くても、臨也は帝人に頻繁に連絡を取ったり、会いに行ったりしていた。
そして今日も帝人の家にお邪魔した臨也だったが、一つ気になっていることがあった。
「帝人君さ、普段何食べてるの?」
「何ですかその質問。」
お馴染みの、ペットボトルのお茶をコップに注いで臨也の前に差し出した帝人は訝しげな表情で答えた。
「いや、君の生活習慣が気になって、」
「…よく分かりませんけど、何って言われても色々ですよ。」
帝人は臨也の言葉に呆れたのか、片眉を下げながらそう答えたが、臨也はその言葉に納得しなかった。
「キミ、ろくなもの食べてないだろ。」
「失敬な!!昨日なんて贅沢にもお蕎麦食べたんですから!」
―その言葉に臨也の何かが切れた。
だって蕎麦が贅沢とか!普段どれだけの生活をしているんだこの少年は!
本当に衝動的に体が動いていて、臨也自身も気が付いたら帝人の手を引っ張っていた。そしてファミレスに直行したのである。
店員がオーダーに来て、臨也はハンバーグ定食、帝人は一番安い蕎麦定食を頼んだ。
「もっと高くてがっつりしたの頼めば良かったのに。しかも蕎麦とか、君昨日食べたとか言ってなかったっけ」
「お金だしてもらうのにそんな高いもの頼めませんよ。ていうか、やっぱいいです。この値段なら自分で払います。」
「でも、その代わり明日以降の食事が豆腐とかもやしとかになるんだろ。」
「ぅぐ…」
仮にも高校生男子が肉も炭水化物も取らないなんて。臨也にはそんな生活考えられなかった。
悔しそうに、テーブルに突っ伏しそうな勢いで俯いた帝人の頭に臨也は半ば無意識に手を置いて笑った。
「こういう時は黙って奢られるもんだよ。」
「…。」
見上げるように目だけをこちらに向けて頬を膨らませた帝人に臨也はさらに笑う。
「…っ、笑いすぎですよ!…あ、」
顔を上げて、臨也を叩こうと手を振り上げた帝人は、何かに気付いたかのように手を止めた。
「何、どうかした?」
「…前にも、こんなことありました?」
「こんなことって?」
「えーと、奢ってもらうようなこと…?」
聞いた本人が疑問系でどうする。臨也は呆れながら帝人を見つめた。
「俺が君に何かを奢るのは初めてだから、俺ではないんだろうね。」
臨也がそう答えると、先ほど振り上げた手を下ろして帝人は、うーんと唸った。あったような気がするんだけどなぁ、とぶつぶつ呟いて今度は考え込むように俯く。
そのうちに、頼んだ料理が運ばれてきて臨也はぱちんと手を叩いた。
「ホント、帝人君は記憶力がないねぇ。こんなんじゃ10年前のことも思い出すの難しいんじゃない?」
「…っ、じゃあ臨也さんは5歳の時のこと覚えてるんですか?」
「少なくとも、そんな変な人間に会ったら顔くらいは覚えてるね。」
ナイフとフォークを綺麗に使ってハンバーグを真っ二つに割りながら自信満々に臨也はそう答えると、帝人はああそうですか!とぶっきらぼうに蕎麦を啜った。
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