巡り出会い

□…訪問
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(竜ヶ峰帝人君、ね)


青年―折原臨也は自宅兼職場である部屋のデスクで、パソコンの画面を見ていた。

竜ヶ峰帝人、昨日の昼間、池袋のサンシャイン通りで突然話し掛けてきた少年のことである。
調べても何も出てこないような、見た感じ普通の少年。案の定、調べても変わったことは見受けられず、本当にごくありふれた普通の人間のようだった。

だが、臨也は気になっていた。

彼が最初、こちらに向けた眼差しはまるで、長年会えなかった恋人に再開したかのようで、キラキラと輝いて見えた。

なぜそのような目でこちらを見たのか臨也は正直戸惑ったが、どうやら人違いだったとの事。


少年が聞いてきた事柄は3つ

10年前、自分に会ったことがあるか
年齢はいくつか
10年前に埼玉に行ったことはないか

帝人が埼玉出身で今までそちらにいたことは、既に調べている。
つまり10年前に埼玉であの少年は臨也と間違えるような誰かと知り合いで、今日はその人物に会いに来た。
いや、違うか。
その人物を探していたか、偶然だったかのどちらかだ。

まあ、ただそんな単純なことなのだろうけれど、臨也は帝人のことを気になっていた。
なぜだかは分からない。
あの少年にはなにかある、という情報屋としての勘か。
少なくとも自分を見つめたあの目が頭から離れなかった。

気になったものは調べなければ気が済まない。
これは臨也の性格。

臨也はマウスを動かして、画面に一つの住所と地図を表示させた。


「気になったもんはしょうがないよね」

呟いてにやりと笑う。

とある場所を差した地図を目に焼き付け、そしてパソコンの電源を消した後、臨也はお馴染みの黒いコートを羽織った。













「…こんなとこに住んでんの?」

あの少年が住んでいる所は、築何十年かのように見える2階建てのボロアパートだった。
確か彼は高校一年になるはず。学生で一人暮らしだからそこまで裕福な生活は出来ないだろうが、だからってこのような所に住まなければならないほど苦学生なのだろうか。

臨也は半ば呆気にとられたようにアパートを見上げ、それから携帯に目を落とした。
午前10時。訪ねるにはちょうど良い時間だ。

さて行くかと、アパートの敷地に足を踏み入れる。カンカンと音を立てながら階段を登ってすぐのドアまで来て、呼び鈴…はないのでドアを軽く叩いた。

するとすぐにはーい、と声が聞こえて、足音が近付いてきた。

「どちらさまですか…って、えっ!?」

ドアが開いてすぐ見えたのは寝癖のついた少年の驚いた顔だった。
寝起きか、もう10時なのに。

「やあ、こんにちは。」

「え、あの、昨日の人、ですよね。」

おどおどしながらドアを半開きで見上げてくる少年は、なぜ此処にいる、とでも言いたげな顔だった。まあ、そう思うのは当たり前だとは思う。
臨也は帝人をまじまじと観察しながら次の言葉を考えた。

「俺は折原臨也、昨日はどうも、竜ヶ峰帝人君」

「なんで、僕の名前…」

「うん、調べさせてもらった」

「調べ…?」

きょとんと首を傾けた帝人は、訳が分からない風だったが、みるみる目が見開かれていく。バンッと瞬時にドアを全開にして叫んだ。

「オリハライザヤって、あの!?」



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