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□そんなある日
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あ、アイス食べたい
なんて思ったのは、ほどよくクーラーの効いた部屋のソファーで夏休みの課題をやっていた時だった。
臨也さんは朝からずっとパソコンに向き合っていて、それをちらりと見た後、僕は大きく伸びをする。
ああ本当に彼の部屋は涼む場所にはもってこいだ。お陰で宿題も自分の家でやるよりずっとはかどるし。
僕が夏に臨也さんの部屋に入り浸るようになったのはそういう理由からだったと思う。あ、冬も割と入り浸っている。だってこの部屋は僕の部屋よりずっと暖かい。
彼は何の文句も言わずいつも招き入れてくれるから、僕はついつい甘えてしまうのだ。
そんなことを考えた後、ああやっぱりアイス食べたいなぁ、なんて思った。
こんな涼しい部屋にいてそんなことを思うなんて、贅沢は敵だと言い聞かせていた以前の僕だったら絶対しない。それも、この部屋にいるのに慣れてきてしまった証拠なのだろう。
さてこれからどうしようか、この家に今アイスはないから外に出て買ってくるしかない。…暑いけど食べたいという欲求には勝てそうにないから近くのコンビニまで頑張るか。
そう思い立ち上がると、窓際のデスクから臨也さんが僕を呼んだ。
「帝人君、俺アイス食べたい。」
「…あなたは僕の心でも読んだんですか?」
余りのナイスタイミングに苦笑して僕が返事をすると、彼は不可解な顔をした。
「何それどういう意味?」
「いえ、僕もちょうど今同じこと考えてたんです。」
「…」
だまる。
俯く。
口元を押さえる。
そんな動作を向こうがしてきて、こっちまで伝染して俯いてしまった。
「…帝人君ってホントやだ。」
「…なんでそうなるんですか。」
「あーあ、コンビニ行くんでしょ?俺も行くよ。」
「えー。」
立ち上がって、なんか文句あんのかという目で見てきた彼に仕事はどうしたんですと聞くと、ひとやすみですぅー、となぜかネカマ口調で答えてきて、思わず笑ってしまった。
―――――――
同じタイミングで同じこと考えちゃって嬉し恥ずかしみたいなそんな感じ。