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幼なじみに恋をするなんてベタな恋愛、
それをこの俺がするなんて思いもしなかった







中学に入ってからだろう

彼、竜ヶ峰帝人を他の人間と同様に見ていないということに気が付いたのは

彼が俺以外の人間と話していればイライラして、
俺以外の人間の話をすれば気分が悪くなって、
離れているだけで不安になって、


こんな感情、俺は知らない



ー否、知ってはいるのだ。ただし、それは他の人間を介してのことであって、それを俺自身が持ったことなど今まで一度もなかったはずだった。

嫉妬、
独占欲、
恋愛感情


俺が彼に対して抱いている感情は、そんな言葉によく似ていた



俺は人間を愛している
上下関係なく平等に愛しているのだ
だから一人の人間だけに執着するなどこの俺がするはずがない、これは一時の気の迷いだ、だってそうだろう?俺は人間という名のすべてを愛しているのだから、
そう、自分に言い聞かせるように心の中でつぶやくこと約一年

一時のものであるはずのその感情は日に日に酷くなっていくばかりだった。持ち前のポーカーフェイスでなんとか帝人には隠していたが、彼が笑うたびに抱き締めたくなったし、彼の家に行くたびに押し倒しそうになった
ーこれは明らかに危険信号だろう!


だから俺は彼から離れたのだ
帝人にはなにも伝えず、ばれないように連休中、彼が家族で出掛けている間に引っ越しをして、池袋の中学に転校し、彼との連絡手段は全て断ち切った

そうして帝人と会わなければ、彼を忘れてしまえばこの感情も消え去るとそう考えていたのに


触れたい
抱き締めたい
笑顔が見たい
声を聞きたい


何ヵ月経ってもその感情は消えないではないか
こんな感情、俺は知りたくなかった

そう愚痴のように数少ない友人(?)にこの事を話していたら一言。

「君も人間だったんだね」


ふざけんな新羅

俺は人間だ。考え方は普通の人間のそれとはだいぶ違うが、まぎれもなく人間だ。
ーだからそうか、これは普通のことなのだ。帝人を好きになるのも嫉妬も独占欲も全て人であれば当たり前のことだ

そう考えればこの感情も受け入れられるような気がした

…降参だ、認めよう。俺は帝人が好きだ、愛している。大多数の人間と同じカテゴリではなく、彼個人をどうしようもなく愛している。


これは変えようのない事実

事実になったとしてその後はどうする?

彼に再会するために元いた場所へと戻るか、いや、それはできない
帝人を愛しているとしても、俺が人間が好きなのは変わってはいない。多くの人間が集まるこの池袋を離れることは出来ない相談である。
ならばどうするか?


残る答えは一つしかない


彼をこちらへ引きずり込めば良いのだ
この池袋に帝人を呼べば良い

俺らしい一番の選択だと思わないかい?


「ーそうだろう?新羅」

「それで彼は見事に君の罠にはまってしまったわけかい?…可哀相に」

臨也が暇潰しのように長々と話していたこれまでの事に、新羅はため息まじりにそう言った

「罠って…人聞き悪いなぁ!こっちは一か八かの掛けだったんだよ。俺は彼に誘導まがいのことはしたけど、最終的に此処に来るのを決めたのは帝人だから。まぁ、自信は割とあったけどさ」

「まぁ、来てしまったものはしょうがないからね。私は竜ヶ峰君が不幸にならないように見守るとしよう」

その言葉に臨也は少しむっとする

「なんでおまえが、ていうか帝人を不幸になんて俺がさせないから」

キミがそう言うのが一番心配なんだと思った新羅だが、余計な揉め事は御免被るので口には出さない。
そうしている間に時間が来たらしい、携帯を見ながら臨也は椅子から立ち上がる

「…と、時間だから俺は行くよ」

「竜ヶ峰君のところ?」

新羅は分かり切ったことを敢えて臨也に聞くと、彼は普段ならありえないくらいに破顔して

「これから買い物なんだ。今日はハンバーグ作ってくれるんだってさ」

聞いてもいないことを喋って教室を出て行った







「真実と事実」






(彼があの子を好きなのはどうしようもない事実なんだ)






―――――――
臨也視点過去話
ここで新羅を出すつもりはなかったんだけれども、どうしようもなく出したくなったんです


読んでくださりありがとうございました!

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