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臨也がいなくなったのは本当に突然だった
2年ほど前だろうか、連休のちょうど次の日だったと思う
学校の朝のホームルームで担任に臨也が転校したという事実を告げられた
僕はひどく動揺したのを覚えている
だって彼からは何も聞いていなかったのだ
先生に転校した場所を聞いてみたが何も聞いていないらしい
家に帰ってすぐに、隣の家を訪ねても誰もおらず、臨也の携帯に電話をしたが繋がらなかった
送ったメールも、すぐに返ってきてしまった
(なんで)
仮にも幼なじみだというのに―
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本当に大切なものはなくなってしまってから気づくものだ。僕は自身にとって臨也の存在がこんなにも大きかったことに今さら気が付いた。ずっと昔から一緒に居たのだから当然と言えば当然だ
臨也を探しに行きたいという思いに駆られたが、冷静に考えれば、僕には彼を探す術もなく、金もない。
僕はその時から頭の片隅で臨也の行方を気にしながら学校生活を過ごすことになった。
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三年の夏ごろだろうか、チャット仲間である甘楽さんから、オリハライザヤという人物が、池袋で有名になっているという噂を聞いた。
(オリハライザヤ)
幼馴染と同じ名前だった。僕と同じように臨也なんて名前はそうはいない。
詳しく話を聞いたところ、一年ほど前に彼は現れたらしい
―臨也がいなくなった時期と同じだった。
その噂の人物と幼馴染が同一人物である可能性は格段に高い。そう思った時、僕は迷っていた高校の進学先を池袋に決めた。元々都会に上京して一人暮らしをしようと思っていたところだ。臨也の行方にも近づくし、一石二鳥だと思ったのだ。
そして僕は池袋にある来良学園への進学を決めた
まさかそこに臨也も入学するなんてまったく思わずに
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「帝人、料理うまくなったよねぇ。最初なんか、ハンバーグ黒こげだったのに」
夕飯のハンバーグを見ながら臨也が感心したように呟いた
「だってこっちに来るまでは料理なんてしたことなかったし、しょうがないじゃないか」
「…よく一人暮らししようと思ったよね。そういえばなんでここに来ようと思ったの?」
「…いけない?僕が池袋にきたら」
臨也の質問に少しドキリとしながら僕は答えた
「そうじゃなくて。来良に帝人がいたときはホント、驚いたからさ」
「僕だって驚いたよ。入学式のときに突然後ろから見たことあるような顔に『あれ?もしかして帝人?久しぶり〜』とか声かけられればさ」
「それ俺のまね?似てないよ」
「別にまねしたわけじゃないから!…ホントに、偶然って恐いよね」
「何その言い方!まるで俺に会いたくなかったみたいな!」
「…」
会いたかった
臨也を探しにここまで来たのだから
だけどそれを僕は彼に言わない
再会した時、まるで僕のことなんか気にしていなかったような口ぶりだった彼にそんなこと言えるはずもないだろう
だから僕が池袋に来た理由を、そして臨也に会ったことを、本当に偶然であると装っている
だから今も
「どうだかね」
そういってはぐらかして、彼を怒らせている
「秘密」
(絶対に言わない、言えない)
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帝人君の過去編(?)でした
読んでくださりありがとうございました