拍手文--
□1
1ページ/1ページ
「いーざーやー!もう起きてよー!」
「んー…あと5分だけ…」
「それさっきも聞いたし!」
現在7時50分
今起きなければ学校に遅刻するだろう確実に
「帝人。今日学校休んでずっとこうしてようよ」
「臨也だけそうしてなさい。僕学校行くから放して」
「やーだー」
僕は今布団の上で、臨也に抱きしめられたまま寝ている状態である
何としても抜け出そうと力を入れるが、彼の力は寝起きでも変わらず強くて、それを押しのけるのは容易なことではなかった
なんでこんな恰好で寝ているかというと、まあ、いつものことである。僕が寝ている間に家に忍び込んでただでさえ小さい布団を半分奪うのだ。自分の家で寝ればいいのにと何度も言ったが、僕がいないと寝れないとか言って聞きゃあしない。なんだ僕は抱きまくら代わりか
イライラしてきたので彼のほっぺたをべしべしと引っ叩いて、うー、とか言って嫌がって力を抜いた隙に僕は彼の腕から抜け出す。
「あー」
「僕もう行くからね」
ご飯を食べる時間は確実にないので、急いで制服に着替えて家を出た。
++++++++
僕と臨也は所謂幼馴染だ
昔は家がお隣さんで、臨也が僕の部屋に勝手に忍び込んでたりとか、いつも一緒に遊んでたりとかした記憶がある
中2の時に臨也が突然いなくなってからしばらく会っていなかった。が、僕が高校に入ると同時に池袋に上京して一人暮らしを始めたころ、臨也もたまたま池袋に住んでいて、僕たちはそこで久しぶりの再会をした。
まさか高校まで同じだなんて思ってなかったけれど
+++++++++
「ギ、ギリギリセーフ…」
チャイムが鳴るのと同時に教室に滑り込んだ僕は、もう息も絶え絶えで自分の席に座るなり机に突っ伏した
「はよー帝人。大丈夫か―?」
前の席に座る人物が僕の頭をぽんぽん叩いてきたが、今の僕にはそれを払いのける気力もない
「紀田君…今は、そっとしといて…」
「今にもしにそうな声だなおい。お前ってそんなに朝弱いの?」
「…のーこめんと」
僕の前の席の紀田君とは、高校に入ってから知り合った
いつも寒いギャグとか言ってくるけど、僕は彼を色々なところで尊敬している。内緒だけど
そんなことを思いながら頭を叩かれるがままになっていたが、ふと彼の手が止まった。何かと気になって僕はゆっくりと重い頭を上げた。
すると紀田君は教室のドアの方を向いて青ざめているではないか
(ああ、なんだ来たのか…)
彼の顔を見てなんとなく予想が付いてから僕もドアの方に顔を向けると、そこには案の定、不機嫌な顔をした幼馴染の姿があった。
「帝人。」
「臨也。来たんだ」
臨也はつかつかと僕の席に近づいてきて、紀田君を一瞥して、すぐ僕の顔に向き直る。
「なんで先行っちゃうのさ」
「臨也学校休むって言ったじゃん」
「断言はしてない。提案しただけ」
「だって遅刻しそうだったし」
「俺が帝人を姫だっこして走れば十分間に合ったよ」
「無理だよそれは!」
「帝人軽いから大丈夫だって」
「そういう問題じゃない!」
こんな言い合いもいつものことだ。クラスのみんなは関わるまいと目を逸らしているし、紀田君はまだ青ざめたままだ。そんなに恐いのだろうか、この男が。
僕には昔っから同じ、飄々として人ラブで変な人間にしか見えないのだが。
もうすでに授業開始のチャイムが鳴っていたが先生も一向に来る気配がない。
僕は溜息をついて、臨也を交渉すべく話を持ち出した。
「…臨也教室戻りなよ」
「今日は俺ここで授業受けるから」
「いやそれおかしいでしょう」
「帝人と俺が違うクラスってことがすでにおかしいんだよ。その席代われ紀田正臣」
「矛先俺に来た!?」
「紀田君を困らせないでよ。それに僕と臨也が違うクラスなことにおかしいことは全くないから」
いきなり会話に引き出されて紀田君が心底嫌そうな顔をしているのを見て、僕は臨也に抗議した。すると彼は不機嫌な顔をさらに濃くしてしまって、どっかしら地雷を踏んでしまったらしい、空気が一気に悪くなった気がした
(これは、やばいかも)
ナイフでも持ち出すんじゃないかという彼の雰囲気に、僕はいつも使っている最終手段を使うしかないと口を開いた
「臨也」
「…」
「今すぐクラスに戻るなら今日ウチの夕飯に招待するから」
「…
ホントに?」
「うん」
僕の言葉に彼の口元が弧をえがいた。まるで待ってましたと言わんばかりに
「ハンバーグがいいな、俺」
「わかったわかった。帰りに材料かってこなきゃ」
「やった!帰り、待ってて」
「はいはい」
臨也はよく僕の家で一緒に食事したり、泊まったりしたがる(だからやばいと感じた時はこのネタで機嫌を取ったりもする)
彼も僕と同じで一人暮らしだからか、顔に似合わず寂しがり屋さんなんだろうか。ていうかハンバーグチョイスって子供みたいで笑いそうになった。
交渉成立で機嫌が直った臨也は約束とか言って無理やり僕と指切りして、意気揚々と教室を出て行った。そういう所は割と単純だ
そのすぐ後に、先生が教室にやってきて(どうせドアの向こうで待っていたのだろう)クラスの雰囲気が一気に日常へと戻る。紀田君のさっきまで青ざめていた表情もすっかり元どうりで、今度は同情のまなざしを僕に向けていた。
「日常茶飯」
(これが僕の今の日常)
−−−−−−−−−−−−
またパロ始めました(汗)拍手連載でしばらく頑張ります
同級生の醍醐味はやっぱり呼び捨てだと思う。
次は帝人か臨也のターンで過去話になるはず…です(予定は未定)
ありきたりなパロだと思うので、どっかしらでもしあまりにも似たようなお話があればひっそりと教えてくださると嬉しいです。そしたらひっそりと消しますので。
読んでくださりありがとうございました!