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静かな場所を探していた

うるさい奴らがいない

誰の声も聞こえない

そんな場所を探していた















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帝人は放課後の職員会議から図書室へと戻るところだった

(誰も来てないよね、きっと)

本当だったら図書委員でカウンター当番に当たっている生徒が放課後に来てくれるはずなのだが、今の今まで誰も顔を出したためしがない

(ちょっと問題だと思うんだけどな)

今度の委員会で注意しないといけないだろうと溜息を吐いて図書室のドアを開けると、人の気配がした

もしかして当番の生徒が来てくれたのかと少し嬉しくなりながら帝人は図書室を見回す。すると奥の奥の方のテーブルに突っ伏している生徒の姿が見えた

(当番の子、ではなさそう)

傍の開いている窓から入ってくる風によって綺麗な金髪が揺れる。その姿が少し寒そうに見えたので帝人はなるべく音を立てないよう、そっと窓を閉めた。








最終下校のチャイムが鳴り、裏の方で仕事をしていた帝人もそろそろ帰る支度をしようとカウンターに出ると、奥のテーブルでは先ほどの生徒がまだ突っ伏したままだった

(相当疲れてるのかな)

起こすのも何かかわいそうな気もしたが、学生はもう下校しなければならない時間である。しかたがない、と奥のテーブルへと足を運び、生徒の肩をトントン、と叩いた

「…−んー…」

「もう下校時刻だよ」

「…!!」

声をかけると、その生徒はがばぁっとものすごい速さで顔を上げた。
その速度に帝人は驚いて後ろに後ずさってしまい、その姿を見て生徒は少しびくりとしながらすまんと謝った。
見かけによらず優しそうな子だと帝人は少しほっとして再び彼に話し掛ける

「いやいや、こっちもごめんね。もう少し早めに起こせばよかったかな?」

「いや、それは別に…あんたは?」

「…?えっと、それは僕が誰だか聞いてる?」

「?当たり前だろ」

お互いではてなを飛ばし合って、最後の言葉に帝人は落胆する。その姿を見て、生徒はまたはてなを飛ばした

「おれもしかしてあんたに会ったことあるのか?」

まさか、と少し申し訳なさそうな顔で尋ねた生徒に、帝人はいやいやいや!と手をぶんぶん振る

「うーん、会ったというか、見てるかもしれない?まあいいや、えっと、僕は竜ヶ峰帝人。この来良学園の図書館司書をやってます」

「…!?年上だったのか!?」

「驚くとこそこ!?」

信じられないというような目で見つめられて、帝人はまたもや落胆した












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「すいませんした…」

「はは、大丈夫だよ。よく言われてることだし」

どう見たって成人男性には見えない、はっきり言うと童顔である帝人はしばしば学生に間違われることが多かった。昔からのコンプレックスである

「一応始業式であいさつしたんだけどな…まあ、ああいうのってちゃんと話聞いてる人少ないよね」

「…すんません」

「だからいいって」

あまりにも目の前の生徒が落ち込んでしまったため、帝人は逆に申し訳ない気持ちになり、話題を変えようと頭をまわした

「そういえば。君の名前は?」

まだ聞いていなかったと、ふと思い帝人がそう聞くと、その生徒は少し間をおいて、平和島静雄、と、そう名乗った

平和島、平和島静雄

最近聞いたような名前だったと考えを巡らせて、ふ、と頭の隅で引っかかった出来事があった。入学して一週間ほどたったころ、帝人は幼馴染である紀田正臣に聞いた話の中に出てきた名前だ。

平和島静雄と折原臨也

入学して早々学校内を壊しまくっている危ない生徒がいると

よくよく彼を見てみると、確かに正臣が言っていた特徴と同じだった


「そっか!君があの平和島くんか!」

やっとのことで思い出して、帝人はつい大声が出てしまった。目の前の青年、平和島静雄は少し眉を寄せる

「俺の噂とか、聞いてるんスか。やっぱ」

「え、うん、少しだけね。まさかこんなかっこいい子だとは思ってなかった」

「は」

「だって話では、背が高くて力が強いとしか聞いてなかった」

「…もっと他にないんスか。危ない奴とか」

静雄は自分で言って苦虫を噛み潰した様な顔になる。帝人はそれをみて、ああそうか、と勝手に納得した

「聞いてたけど、実際会ってみたらそんな危ない子だって感じはしないし、優しいし、ちゃんと目上の人に敬語を使う礼儀正しい子だし」

「…は」

「第一僕は君に何にもされてないし、今から何かしようものならそりゃあ逃げるけど。今の君の顔見て思ったんだけど、その噂ってものすごく不本意なことなんじゃないかな」

「いや、あの…」

「噂に耳を傾けるのもいいけど、やっぱりちゃんと会って話してみないとわからないもんだよね。君が校内を壊しまくってることが事実であっても、危ない子ではないって今解かったし」

このまま勘違いしてなくてよかった、と帝人は笑った。
その顔を見て静雄は一瞬だけ固まったが、すぐそっぽをむいて、帝人の頭をぐしゃぐしゃと掻き回した

「わっちょっ、やめなさい!」

「…変な人だな、あんた」

「ええぇ?普通すぎるとはよく言われるけど…これはありがとうと言うとこ?それとも怒るとこ?」

聞き慣れない言葉を聞いて帝人がおろおろと言葉を発すると、静雄は彼の頭に手を置いたまま苦笑した














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帝人先生と静雄君の出会い編です

下校時刻のチャイムが鳴ってからだいぶたってます。あともうちょっとしたら巡回の先生が来て、帝人達怒られますきっと。

入学式から3、4週間くらいたったとこかな、と考えてたり

読んでくださりありがとうございました!

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