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□図書館パロ―本編
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来良学園一階の隅の隅にある図書室
普段は誰も寄り付こうとしないそんな場所

そんな場所に今年から一人の司書が就いた

竜ヶ峰帝人という名の至極普通の青年である











6時間目の授業が終わることを知らせるチャイムが鳴ったちょうどその時、一人の青年が図書室のドアを開けた

「みっかどせんせー」

「折原君!?」

台に乗って高いところの本の整理をしていた帝人は危うく落ちそうになった。

「あっぶな、大丈夫?」

「…うん、まあ。折原君ホームルームは?」

「先生に会いたかったからサボってきた」

「…ていうか6時間目もさぼったんじゃ」

臨也が来たのはチャイムが鳴ってすぐだ。仮に6時間目を受けていたとして、終わってここに来るまでにもっと時間がかかるだろう。授業が早く終わったのかもしれないが、この青年に関してはサボりという線が一番有力なのである。入学してすぐのころは授業をサボって図書室に来るもんだから追い返していたこともあった。

「会いたかったって言葉はスルー?まあいいけど。授業は受けてた。途中まではね」

途中、という言葉で帝人は理解した。さっきまで聞こえてきた騒音はそれが原因か。ていうかそれ以外にない。

「また静雄君と喧嘩したの?」

「喧嘩!?一方的な暴力だよあんなの。なんなのホント理解できないあの馬鹿力ふざけんなしねばいいのに。」

平和島静雄は、折原臨也とすこぶる仲が悪い。帝人がそれを知ったのはここに就いて1週間ほどたったころだったか。
ほぼ毎日のように喧嘩し、学校のものを破壊しまくっている二人がいると、幼馴染でここで教師をしている正臣から話を聞いた。絶対に関わるなと念を押されていたが、今こうして普通に話をしてしまっているのだからもう遅い。

静雄の方もよく図書室に来るので帝人はよく知っていた。ものすごく短気ではあるが根はとても優しい良い子だ。ただ一度切れるともう手には負えないくらい暴れまわるとかで(ほぼ臨也が原因らしい)本人はそれについて深くなやんでいるという。

ほとんど図書室にいる帝人はそんな二人の争いをあまり見たことがないが、たまに聞こえてくる何かが爆発したような騒音にはいつもはらはらしている。

「今日は怪我はない?」

「ないよ。そう簡単にやられたりしないって」

「そう、よかった」

臨也の言葉をきいて帝人はほっとして胸を撫で下ろす。
喧嘩をするたびに何かしら怪我をしてくる二人を帝人はいつも手当している(救急箱常備しなければならなくなった)。保健室にいけばいいのにとも思ったが、二人とも保健室は嫌いらしい。
時おり帝人にも手の負えないような怪我までしてくるもんだからその時は病院に行けと言っているが、ちゃんと行っているかどうかは分からないところである。
とにかく帝人はそんな二人が心配でしょうがない日々を送っている。

「…静雄君は大丈夫かな」

「あいつの心配なんてしたって無駄だよ。ナイフも刺さらないような化物じみた体してんだから」

ぶすっとしながらそんなことを言い出す臨也に帝人は軽くチョップをくらわす。

「ナイフなんて使っちゃ駄目だからね」

「…そんなにシズちゃんが心配?」

「心配だよ。折原君のことも心配してる。ホント、怪我には気をつけてね」

「…忌々しい。俺だけ見てればいいのに。」

「え?」

小さく呟かれた臨也の言葉に帝人は聞き返したが、何でもないよ、と嘘くさい笑顔で返された。

―帝人は知らないのだ。ここ最近の臨也と静雄の喧嘩の原因は半分は帝人についてだということを。

自分が割と危機的な立場にいることに全く気付かず、高校生ってこんなんだったっけと帝人は自分の7年前を思い出しながら本のかたずけを再開しようとすると、臨也がぴくっと何かに反応したように図書室のドアに目を向けた。
そしてすぐに窓の方に走る。

「折原君!図書室内は走らない!」

「それどころじゃないから。先生、今はそれでいいけど今後は覚悟してね。じゃ!」

「へ?ちょっと…」

何を覚悟するのだ、と帝人が確認する間もなく臨也は窓から飛び出していった。
それとほぼ同時に、図書室のドアが開けられる。

「いざやぁ!どこ行った…ってあれ」

「あ、こんにちは。静雄君」

先ほど出て行った青年の天敵である平和島静雄の登場である。
なるほど、彼の存在をいち早く察知したわけかと、臨也の行動を感心する帝人だった。二人がここで会えば図書室がめちゃくちゃになりかねない。

「ここにノミ蟲来ませんでした?」

「来てないよ。それより今日はどうする?なにか本借りる?」

上手く臨也から関心をそらそうと別の話題を用意する。

「いや、今日はいいっす」

「そう、あっ、怪我してない?」

先ほど心配だったことを帝人は直接静雄に聞いた。臨也はあんなことを言っていたが、それでもやはりこの学校の一生徒である。心配なものは心配だ。
大丈夫だ、とすぐに帰ってきた返答に帝人はほっとした。

「俺のこと心配してくれるのは先生くらいっすよ」

そういって彼ははにかんで笑う。こういう笑顔をみると本当に優しい子だとわかる。自分以外でもいくらでも心配してくれている人はいるというのに。それに彼が気付ければいいと帝人は思う。

(それ以前に喧嘩なんてしないで仲良くしてくれると助かるんだけどなあ)

他の人間なら、絶対にむりだ、と口をそろえて言うだろう事を帝人はさらりと考えながら今日も仕事が終わるのだった。












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はじまりはじまり
続けるかどうかは自分次第。
とりあえずぶわあっと浮かんだ設定から軽く書いてみました。
帝人君、司書らしいことしてない(汗)

読んでくださってありがとうございました!!

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