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□スイーツ
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静雄たちの家に行くなんてことは日常茶飯事だ。それはもう昔から。
「静雄さん。紅茶入れますね。」
「おぅ。わりぃな。」
静雄の家について、帝人はいつものようにそう言ってキッチンの方へと足を向けた。静雄は帝人の鞄を預かって部屋の脇へと置いておく。
帝人が学校以外では先輩ではなく静雄さんと呼ぶのは静雄がそうしてくれと言ったからだ。(なんだか自分に先輩と呼ばれるのは慣れないらしい)本当は学校でもさん付けで呼んで欲しいっぽいのだがそれは帝人が反対させてもらった。
だってせっかくだし先輩とか呼んでみたいじゃないか。
そう素直に言ったら、あー、とか叫びながら頭をわしゃわしゃ撫でられた。
ちなみに彼の家に来た時に紅茶やらコーヒーやらを作るのはいつも自分で、それはなぜかというと静雄が帝人が入れた方が美味いと言った所為であった。そんなこと言われたら自分からやりたくなるじゃないか。
二人分の紅茶を入れてそれを今度はダイニングへ持っていく。静雄は買ってきたスイーツをテーブルに並べていた。幽の分は冷蔵庫にしまって、二人並んでソファに座って待ちに待った新作に手を付けた。
(ああやっぱり甘いものは素晴らしい。)
口に広がる甘さににやついてそう思いながら帝人は隣をふと見上げた。静雄も同じような顔をして食べているのに少し笑いがこみあげてしまう。
「どうした?」
こちらが見ていることに気づいたのか静雄がそう聞いてきた。帝人はどうしようか考えて結局思ったことを言う。
「静雄さん可愛いなぁ、と思って。」
「何言ってんだ。お前の方が可愛いだろ。」
「っな…」
そういうことを淡々と言わないでください。静雄の切り返しに帝人は恥ずかしくなって新作ケーキを口に入れる。
「間違えました。静雄さんは、か、格好いいんでした。」
「噛んだな。」
「むぅ…」
優しく笑う静雄に帝人は逆に頬を膨らませる。こういう言葉はいつになってもすんなりと口に出せない。
「いいですよ。もう、ケーキ半分あげようと思ってたけどやめました。僕1人で食べちゃいますから。」
目の前にあるのは静雄が買っていない方の新作スイーツだ。一つしか買っていない彼にはやっぱり悪いので半分こしようと思っていたがまだ笑っている静雄を見て、やっぱりやめようと帝人は残りのケーキ半分を口に頬張った。
静雄はそれを見てきょとんとした顔をする。もう遅いもう遅い、帝人はもぐもぐとケーキを咀嚼して飲み込みながら満足したように静雄を見上げた。
と、同時に腕をひかれて口を塞がれた。
「…っ」
触れるだけではないキスに苦しくなる。けれど帝人は逃げずにそれを受け入れる。ぎゅう、と静雄の腕を掴めばゆっくりとソファに押し倒された。
「し、ずおさん?」
「今のはお前が悪い。」
可愛いことするお前が悪い、そう呟いた言葉を聞いて帝人は首を傾ける。
可愛いことなどしてないのに。そう思いながらうつろな視界で静雄を見上げると、そういう顔も駄目だからなという言葉とともに再び口を塞がれた。
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