拍手文--

□スイーツ
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※静雄高3、帝人高1で幼馴染なパロ






普通だったら静かであるはずの授業中に何かが爆発したような音が鳴り響く。
普通だったら学校にいる誰もが何事かと騒ぎ立てるだろうが、生憎日常茶飯事なので教師も生徒も溜息等を吐くだけで今日最後の授業は止まることなく続けられている。
帝人もその溜息をついた一人だった。深く深く。心配事を抱えたような顔をして。



放課後になり、帝人は鞄に荷物を急いで詰め込んで教室を足早に出ていった。今日はどこにいるだろう。あの時間に戦争の様な喧嘩をしていたとなると教室には絶対にいないはずだ。所々にあの人が投げたと思われる机やら学校の備品やらが落ちていて、帝人はそれらを頼りに各教室を見て回った。
そして校舎の一番端の空き教室でその姿をやっと見つけた。

「静雄先輩!」

ここでも派手に暴れたらしい。教室の中は滅茶苦茶で、その真ん中あたりで金髪の生徒が横たわっていた。帝人はその状態を見てすぐさま駆け寄った。

帝人の声に「んー」と少し唸っただけで静雄は動かない。帝人は静雄の顔を見てほっと息を吐いた。

どうやら寝ているだけらしい。

あれだけ校舎中を動き回ればそりゃあ疲れもするだろう。帝人はそっと静雄が寝ている隣に座って彼の顔をまじまじと見つめた。



帝人にとって静雄は所謂幼馴染だ。小さいころから二つ上の静雄と一つ上の幽、その二人といつも一緒に遊んでもらっていたことは今でもよく覚えている。二人からすると、しずにぃと呼びながらとことことついて回っていた姿が忘れられないくらい可愛かったらしい。(それについては自分はノーコメントだ)
何にせよ、そんな昔から今現在までずっと一緒にいて、彼、静雄への意識が曖昧な好きから確実な恋へと変わった(自覚したというべきか)のは静雄が高校に入ってからだった。
静雄が高校にはいってから街中では戦争が起きるようになった。二人だけが起こしている戦争。一人はよく知っている静雄で相手は折原臨也というなんか危なそうな人物で。(臨也からしたら静雄の方が危険だというが自分には分かりかねた)
帝人はそんな惨状をみてどうしようもなく不安な気分になったのだ。それはいつもどこかしら怪我をしている静雄を見てでもあったけれど、根底にあるのは別の感情であって後々に気づいたらそれは嫉妬というやつだった。臨也に静雄を取られてしまうんじゃないかっていう不安だった。
そんなことを考えてしまう自分に苛立って友人に相談してみたりもしたら絶対にそれはないと目一杯否定されたけれどそれでも不安は募るばかりで。帝人は耐えきれずに、ある時静雄に好きだと言ってしまった。
−あの時のことはきっと一生忘れない。
彼は驚いた顔をしたけれど、すぐに優しく微笑んで帝人を抱きしめた。





あの時から一年以上はたっただろうか。そう考えながら帝人は静かに鞄から絆創膏を取り出して、静雄の額の傷になっている部分に貼る。血は出ていないしこのくらいは大丈夫だといつも静雄は言うが、それでもこっちが見ていて痛々しいのだ。
そっと静雄の髪を触っていると最終下校のチャイムが教室に鳴り響く。その音にはっとして帝人は静雄を呼んだ。

「静雄先輩。」

肩を少し揺らすと、唸り声をあげて静雄は目を開けた。

「んー…あぁ、帝人?」

「お早うございます。」

起き上がって伸びをしている彼に帝人はそう声をかける。静雄は「あー…」と眠そうにこめかみを押さえた後、周りを見渡した。

「あれ、今何時だ?」

「夕方ですよ。最終下校時間です。」

「…わりぃ。待たせたか?」

時間を聞いて子犬のようにしゅんとした静雄に帝人は大丈夫ですよと声をかける。彼が悪いわけではない、自分だってじっと彼の寝顔を見てしまって起こすのを忘れてしまったのだから。
けれどそれでもすまないという顔をしてくる静雄に帝人はじゃあ一つペナルティを、と提案を出した。

「近くのコンビニに今日新しいスイーツが入るらしいですよ。買って帰りましょう。」

「それはペナルティじゃないんじゃないのか?」

「実は二つ新作があるんですよ。僕は二つ買いますけど、静雄先輩が買うのは一つだけですよ。」

帝人がそう言うと静雄はすぐに了承したが、その顔が明らかに残念そうな顔をしていて。本当に彼は甘いものが好きだなぁと帝人は少し笑ってしまった。
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