拍手文--

□時には素直に でもやっぱり
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素直になれない僕だけど、あなたは愛してくれますか?







『はやくきて』



(え、なにこれ。)

先ほど来たメールの文面を読んで臨也は疑問の声を上げた。メールの主は竜ヶ峰帝人、可愛い可愛い恋人からだ。
はやくきて。つまりははやく僕のうちに来てくれ的なことだろうか。臨也は唸りながら思考を巡らせる。
もしかしたらこれは自分に宛てられたものではなくて他の誰か宛てに間違えて送られてきたものなのかもしれない。だって帝人とはつい数時間前まで会っていたのだから、別れたばかりでこんなことをいうのはおかしいし、しかも普段の彼ならこんなことを自分に言ってくるはずもなくて。
竜ヶ峰帝人という人間は自分に対してあまりにもツンデレなのだから。

メールの文面をもう一度見直して臨也もう一度唸り声を上げる。まあ、たとえ自分宛でなくとも間違えたのは帝人の方だ。自分が行ったら、不満な顔をするだろうことは予想出来るが、そうしたら呼んだのは君の方だろうと言ってこのメールを見せれば彼はきっと何も言わなくなるだろう。

さあて、と呟いて臨也は一人笑みを浮かべる。そして愛する少年の元へ向かうべく愛用のコートを羽織った。












〜数時間前〜

(ああ、駄目だ…)

自宅のドアを閉めて帝人は一人そう呟いた。
ついさっきまで臨也と共にいて、所謂デートというものをしていたのだが、帝人はいつものように後悔をしていた。
臨也とそういう関係になってからもうだいぶ経つ。自分は彼が好きで、だから彼が告白をしてきた時も嬉しくて、泣きそうになるほど嬉しくて。
けれどその気持ちを彼に直接伝えたことはない。想いは伝わっている、こうして付き合えているのだからそれは分かるのだが、ちゃんと自分の口でそれを言えた試しがない。なぜかって、恥ずかしいからだ。
例えば彼が好きだと言う言葉を自分に言ったとしよう。可愛い恋人ならばそこで自分も好きだと告げるのだろうが、自分は残念ながら可愛くない方で、口から出る言葉は馬鹿ですか、の一言。ちなみに彼が抱きついてくれば、暑苦しい、急に家に来れば帰ってください。基本的に思っていることとは別の言葉を吐いている。

可愛げがないと自分でもわかる。でもそんな自分を変えることがなかなか出来なくてこうして延々と悩んでいるのだが。
溜息を吐き、テーブルに携帯を置く。のどが渇いたなと感じて冷蔵庫を開けようとしたが、その前にそう言えばと思いだした。

(昨日門田さんたちにジュース貰ったんだっけ。)

学校帰りに偶々会って、狩沢や遊馬崎になんだか自分では理解できそうにない会話をされた後、お土産にと渡された缶ジュースが山ほど入った袋が確か玄関の近くに置いてあったはずだ。
せっかくだから飲ませて貰おう。そう思い帝人は数歩先の玄関まで戻って大きな袋の中身を開けた。



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