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□予想外だ
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もうすぐ彼の誕生日だなと思ったのはその当日の1ヶ月程前のことだ。

その時から臨也は、帝人の欲しいものはなにかということを考え始めた。仕事の合間に入ってはひたすら悩んだり、ちょくちょく会う時にも帝人を観察しながらプレゼント候補をいくつか上げていったりしていたのだが。本当にこれで良いのだろうかなんてうだうだ考えてしまい、結局一つに絞れず取り敢えず良さそうなものは一通り買っておくこととなった。


自宅のデスクに座って、視界の脇に見えるプレゼントの箱の山に臨也は小さく溜め息を吐く。少し離れた場所で仕事をしていた波江がその山を見るたびに顔を顰めるのも見えて再び溜め息。
なぜこんなに悩まなければいけないかなんて、そんなの恋人に喜んでほしいからであって、しかも付き合い始めてからはじめての誕生日を祝うプレゼントだ。
嫌がるような物をあげることはないと自信があるが、あの少年の一番喜ぶものをあげられる自信があるといえば若干嘘になる。
それなら直接欲しいものを聞いちゃえば間違いはないんじゃないか、なんて思ったりもした。
けれど聞いたところで真面目なあの少年は何も言わないのだろうことは目に見えて分かる。

―だけれどこのままでは渡すものが決まらない。


うん、と一つ頷いて、臨也は一か八かの駈けに出ようと携帯を取り出して恋人のアドレスを開いた。
そしてもう何度とも掛けてきた電話番号にカーソルを合わせ決定ボタンを押す。
呼び出し音が何回か鳴った後に愛しい少年の声がした。

『もしもし。臨也さん?』

「やあ、帝人君。いきなり悪いね。」

『いえ、大丈夫ですけど。』

つい2、3日前に聞いた声なのにもう久しいような気のするのが不思議だ。しみじみと感じていると、受話器越しにどうしたと言う声が聞こえてきて我に返った。

『電話してくるなんて急な用ですか?』

帝人の尋ねる言葉に臨也はさも今思いついたように、そうそうと言い返した。

「帝人君もうすぐ誕生日じゃない?」

『は?…ああ、そういえばそうですね。』

気のない声を出す帝人に臨也は言葉を続ける。

「何か欲しいものないかな、と思ってさ。」

『―へ?』

今度は間の抜けた声。驚いていることも電話越しに伝わって臨也は苦笑した。さて次はどう言えば良いかと頭を瞬時に巡らせる。

『あ、あの?いきなりなんですか?』

「何でも良いとか特にないとかなしだよ。遠慮なしで君が一番欲しいものをあげたいから。何か欲しいもの、ない?」

帝人の戸惑いの声に臨也はそう畳み掛ける。これでどうだ。一番欲しいものでないにしろ何かしら言ってくれれば考える足しになる。

『あの、えー、と。…。』

帝人は黙ってしまい臨也はそれに何も言わず答えを待った。
数秒、受話器越しに唸る声が聞こえて、ああこれは駄目かななんて臨也が諦め掛けたときに帝人は躊躇いがちに『それじゃあ』と言った。

「なになに?何でも言って?」

『…あの、欲しいものっていうか、』

「ん?」

『…臨也さんと、1日ずっと一緒にいたいなぁ、なんて、』





「……………え?」


『わ、忘れてください!御免なさいっ!―』


ブツ、

と通話を一方的に切られて、臨也は数秒間携帯を見つめた。
それから静かにデスクに携帯を置く。

先程言われた言葉を頭の中で数回繰り返し繰り返し繰り返し――



バンッとデスクを拳で叩いて黙々と仕事をしていた波江に思いっきり叫んだ。


「っどうしよう波江さん!
帝人君超絶可愛すぎるんだけど!!」

「どうでも良いから仕事しなさい。」




―――――

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