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□いとしい
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不法侵入というやり方で彼の家にお邪魔したのはこれでもう何度目だろう。
臨也はいかにも古そうな天井を見上げながらそう考える。
はじめはこんな家には絶対住みたくないななどと思ったものだが、今はどうだろう。ここにいるのも悪くないなと感じていた。
人一人が寝るので限界なくらい狭いのも、
すきま風が通ってまったく暖かくないのも、
ギシギシと言いそうなくらい古い床も、
階段を上る音が聞こえてしまうほど薄い壁も、
―ドアを開けて、自分を見て、眉をひそめながらもただいまと言う彼も、
今はとても愛しい。
「好きだよ。」
息をするのと同じくらい無意識に、自然に口から出た。その言葉に顔を赤くさせて、寝呆けてるんですかと聞いてきた帝人が。
「うん、好きだ。」
「…何ですか、どうしたんです?」
彼はは訝しげにこちらに近づいてくる。手の届く範囲まで来たところで臨也は帝人を抱き締めた。
驚いた声を上げた腕の中の少年に自然と口元が緩む。
(ああ愛しい。)
最初は抵抗するのに最終的には抱き締め返してくれる彼が、本当に愛しい。
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