短編
□言ったことには責任を持ちましょう
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突然の呼び出しで渋々臨也さんの家に行ったら、ソファーを指差してそこに座ってて、と言った後臨也さんはキッチンへと向かっていった。
少しすると、トントン、とリズミカルな音が聞こえてくる。
(もしかして料理を作っているのだろうか)
しかしどうして突然?
こっちは訳が分からないが向こうは何かしら理由があってこんなことをしているはずである。
まあ、自分が考えてもあの人の考えなどわかるはずもないので、取り敢えず待ってみることにした。
だが、
(暇だ…)
こう何もせずに座っているというのは逆に疲れないだろうか。他人の家なので何かできるわけでもない。
それに臨也さんの様子も若干気になったし、何か手伝えることはないかと僕はキッチンへ向かった。
そっと様子を覗いてみると、臨也さんはジャガイモの皮を器用に剥いている所だった。
「臨也さん、何か手伝いますよ」
「いいよいいよ。君は座ってて?」
「でも、何もする事なくて暇なんです。何を作るんですか?」
「…カレー。」
なんだろう。臨也さんがカレーって…
「割と庶民的なものですね。」
「え!いけない!?」
「そうじゃなくて。ただ、ちょっと以外だっただけです。
僕好きですよ、カレー」
「そう、ならよかった。
キミが好きなものじゃなきゃ意味がないからねぇ」
ん?てことは僕のために作ってるってことか?
また突然、なぜそうなったのかよくわからなくて、やっぱりわからないことは直接聞くに限るので訪ねることにした。
「臨也さん、なんでまたこんなことを?」
聞いた直後、臨也さんは一瞬固まって、そしてゆっくりこっちを見た。
「…帝人君…?覚えてないの…?」
「へ?何をですか?」
まったく見に覚えが無い僕はそう答えるしかない。
すると臨也さんはひどく悲しい顔をした。
「そ…っか、帝人君の俺に対する言動って忘れちゃうくらいどーっでもいいことなんだね」
「え?あ、あの、いざやさ…」
「あー、もういいや。帝人君あと宜しく」
「へ、え、はあ!?」
臨也さんの話の展開に僕がついていけずにいると、臨也さんは面倒くさそうにそう吐き捨ててリビングへ歩いていった。
なんなんだなんなんだ!臨也さんのする事は全く理解できない!!
今の臨也さんの態度にイライラしてこのまま帰ってしまおうかとも思ったが、目の前の中途半端に投げ出された食材の数々を見て思いとどまる。
放っておくのももったいないしお腹も空いた。しかたがない、そう思い、続きを作り始めた。
(そういえばこの間は僕が臨也さんに料理を作ったんだよなぁ)
いきなり僕の家に押し掛けてきて、僕の手料理が食べたいとか言い出したので取り敢えず簡単なものでやり過ごしたはずだ。
(あれ…?)
その時のやり取りを思い出しているとふとひっかかるものがあった。
そうだ、あの時確か――
野菜を炒めながら必死に記憶を探って探って、そして思い至った。
あー…さすがに今回は自分が悪いらしい。
僕は一旦火を止めて、リビングに向かう。
そしてソファーに座っている臨也さんに後ろから声をかける。
「臨也さん。」
「…」
「…すいません。この前僕が臨也さんの料理食べてみたいって言ったから今日作ってくれてたんですね」
「…」
臨也さんの無言を肯定と受け取り、僕は言葉を続ける。
「うれしかったです。あんな些細なことを覚えててくれて、今日それを実行してくれて。
今回はホントに僕が悪かったです。お詫びに今日は僕が作るので、途中からですけど…、臨也さん、また今度料理作ってくれませんか?」
精一杯謝るつもりでその言葉を口にすると、臨也さんはくるりと僕の方に顔を向けた。
「…また忘れたりしない?」
やっと返事を返してくれたと思い、僕はほっとした。なんだかんだで僕はこの人に嫌われるのは嫌らしい。
だがまだ臨也さんのぶすーっとした返答に、やっぱり根に持つタイプだなぁ、と僕は苦笑した。
「さすがに二度も忘れませんよ。というか、あんな些細な一言を臨也さんが覚えててくれたことに驚きです」
「帝人君の言った言葉なら全部覚えてるよ!いつどこで何時何分何秒に何を言ったかもね!」
「はは。何で殴ったらそれ忘れてくださいますかね」
(それはさすがに気持ち悪いです臨也さん。)
―――――――
なんか中途半端ですみません。取り敢えず最後の言葉を言わせたかった。
この後は、帝人君がカレー作って二人でテレビ見ながら食べて、いちゃいちゃしてればいいと思います。
臨也さん、なんかヘタレ過ぎます。