短編
□会いたい、です
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走る走る走る
携帯を手に持ったまま
短く
ただ、会いたい、とただそれだけの内容で
黒服をまとった青年は愛しい少年の元へ走っていた
(どうしようどうしようどうしよう)
携帯のメール送信画面を見ながら僕は心底後悔していた
先ほどある人物にメールを送った。普段絶対に自分からメールなんか送ったりしない相手。それなのに今なぜ送ってしまったのか自分でもわからない。
ただなんとなく
なんとなく、会いたかった
はあ、とため息をひとつ。
できることなら来ないで欲しい。今のメールはただの気の迷いだ。
そう心の中で考えているものの、もっと奥底では来てほしいという声が聞こえてくる。
(こなかったら)
考えただけでなぜか泣きたくなった。…これはもう手遅れですか。
はあ、とため息をもう一つ
その直後トントン、とドアを叩く音がした。
あの人だろうか。でもメールを送ってからあまり時間は経っていないし違うかもしれない。
期待と不安が入り交じった状態で恐る恐るドアを開けた。
その途端、視界が黒に染まる。
「臨也、さん」
臨也さんは何も言わずただぎゅう、と僕を抱いていた。
「臨也さん、苦しいです」
「帝人君。何かあったの?」
え、と僕は疑問の声を上げる。僕はただ、会いたいとメールしただけだ。
「だって、悲しいことに帝人君からメールくれたことってなかったからさぁ。しかもいつもの君なら書かないような内容で、うれしかったけどね。なんかあったって思うでしょ。」
「…」
心配してくれた。
そう思っただけで顔があつくなる。何も言えずにいる僕に臨也さんは続けて喋りだす。
「でもまあ、会いたくないって言われても、嫌がられても、俺は君に会いに行くけどね」
「最低ですね。」
「なんとでも。でもそれだけ俺は帝人君を愛してるんだよ。」
ああ、もうだめかもしれない。勇気を振り絞って僕は今の気持ちを話そうと決めた。
「臨也さん」
「ん?」
「今日は別に何かあったわけではないんです
ただ…会いたかったんです
臨也さんに、会いたかったんです。
だから、あんなメールしてしまったんです。」
「…」
「ただあれだけの内容なのに、臨也さん来てくれて、うれしいです。すごく、うれしかったです。」
ああ言ってしまった。
恥ずかしくて恥ずかしくて、僕は臨也さんの背中に手を回して、顔を見られないようにぎゅー、と肩に顔を埋める。
「…帝人君。」
「は、はい」
何を言われるのか恐くて、うわずった返事をする。すると臨也さんはこんなことを言い出した
「俺の家に行こう。」
「…はい?」
なぜ今そんなことを言うのだ。明らか話の内容に繋がっていない言葉に僕はただはてなを飛ばす。
「えと…な、なんでですか…?」
「なんかもう我慢できない、手元に置いときたい。
何?わざとなの?誘ってるでしょ!」
「え、あ…は、はぁ!?」
ここまで言われてやっと僕は言葉のすべて理解した。とんでもない事を言い出したこの大人!!
「違いますよ!誘ってないです誘ってないです!!」
「うん行こう今すぐ行こう。」
「いいい嫌です!」
嬉々揚々と勝手に話を進めている臨也さんに全力で抵抗する。もし、ついていったりしたら何をされるかなんて目に見えている。
じたばたともがいて臨也さんの腕の中から逃れようとするが、僕の力で勝てるわけもなく臨也さんはそのまま僕を担いで、言った。
「当たり前だけど、泊まりだから。」
「え、ちょっ…下ろしてくださ、
い、いやだあああああ!」
―――――――
甘いのかきたかったんですけど、撃沈したという…
いつもながら突発的ですいません…あああ