短編

□考えたって意味がない
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「帝人君ほそすぎじゃない?」

「…そうですか?普通ですよ。」


日曜の朝っぱらから勝手に家に入ってきた臨也さんは、後ろから僕に抱きつくなり、そう言った。


「これが普通?帝人君ちゃんと食べてる?」
「…食べてますよ。朝昼晩は絶対に欠かしません。」

これだけは自信を持って言える。3食は絶対に抜いたことがない。…たぶん。
でも僕の答えに対してへぇ…、と言った臨也さんはまだ納得していないらしい。

「じゃあもう一個質問。いつも何食べてる?」
「…色々、ですよ。」
「色々って例えば?」
「…」

僕が何も言わないでいると臨也さんが小さく溜息を吐いた。

「俺の予想ではろくなもん食べてないよね。冷蔵庫はほぼ空だし、棚にはカップ麺が10個くらい入ってたし。」

なぜそんなことを知ってるかは置いとくとして、そこまでわかってるならなんでわざわざ僕に聞くんだ。

なんか今日の臨也さんはいつも以上にうざく感じた。

「帝人君?」

答えを促すように耳元でささやかれる。無駄にくすぐったいから止めてほしいのだが。

「…ああもう。妙にしつこいですね。臨也さんって人の食生活まで気にするんですか?」
「ただ単に心配なだけだよ。
帝人君、本当に高校生なのかって疑うくらい幼く見えるし小さいし、体細いし体力ないし、それに、」

ぶん殴っていいですか?
人が気にしていることをぽんぽんと口に出されることに耐え切れず僕はそう言い返そうとした。

だが、



「そんなんじゃ俺より先に死んじゃいそうじゃないか」





僕の肩に顔を埋めて小さく呟いた臨也さんによってそれはできなかった。
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