短編

□なれてしまった
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今日から新学期が始まった

久しぶりの学校で遅刻しそうになった僕は始業のチャイムぎりぎりで来良学園に着いた。


「あ…ぶなかったぁ」

「はよー!帝人!ってお前めちゃめちゃ汗かいてるなぁ。」

「…あ、正臣おはよう。いやぁ、寝坊しちゃって」

下駄箱で後ろから突然声を掛けてきた親友紀田正臣は僕の顔を見るなりそう言った。そういえば、正臣に会うのは久しぶりな気がする。

「んーなんか久しぶりな気がするのは気のせいか?そういえば夏休みはあんまし遊ばなかったよな」

「そうだねぇ。ほら、僕実家に帰ってたりしてたし」

「それもあるけど。お前俺が遊びに誘った時いつも用事あるって言って断ったじゃん。…はっもしかして彼女か!?彼女なのか!?」

「違うよばか!それはその…バイト、してたから」

「バイトぉ?」

嘘はついていない。だってそう言った、あの人は。

何のバイトをしていたのかをうるさく聞いてくる正臣を軽くあしらいながら僕は教室に向かった。




夏休みの終わりの3週間、僕は臨也さんの家に行っていた。しかも泊まりで。
なんで断らなかったってそんなの、僕が食事を作る代わりに3食タダ、クーラー付きっぱなしの部屋に居られるって断れるわけないじゃないか。
それだけ今年の暑さに参っていた、本当に。
だからって僕も遠慮だってしたし申し訳ないので最初は断っていた。けれど臨也さんは

「だから帝人君に家事全般を任せることにするよ。まあアルバイトみたいなもんだと思って」

そう言って半ば強引に僕を臨也さんの家に連行したのだ。


あの人の家に行ったのは初めてではないし、食器やらその他もろもろの場所は知っていたのでそこまで苦労はしなかった。
臨也さんはパソコンに向かったり出かけたりすることも多かったし(ちゃんと仕事をしていてびっくりした)僕はその間買い物をしたり掃除したりちゃんと家事はこなしていた。
食事は大体は二人で一緒に食べて、寝るときはなんでか同じベットで、たまに一緒に食材買いに行ったりもした。
仕事上臨也さんは帰りが遅くなることもたびたびあった。まあその時には遅くなるってメールが来るんだけども、僕も先に寝ていようと思うんだけど、でも眠れなくて結局臨也さんが帰ってくるまで起きていて軽く驚かれたこともよくあった(同時になんか嬉しがっていた)。そのあとは二人で昼近くまで寝てたりした。

新婚さんみたいだねって臨也さんが言ったときはぶん殴りたくなったけれど、でもそこまで嫌じゃなかったしむしろ楽しかった。この生活も、臨也さんとこうしてくらすのも。

だから夏休みが終わると思った時は少しさびしかった。学校が始まるからって言うのもあるけれど、たぶんこの生活が終わってしまうからという理由もあったからだと思う。
けれど最初から夏休みが終わるまでという約束だ。僕は準備もあるからと始業式の2日前に家に帰った。

「…みかど!」

「うわ!正臣!?」

「どうしたんだお前。もう授業終わってるぞ」

驚いて教室を見回すとクラスのみんなはもう帰り支度をしていた。ずっと考え事をしていたらしい、始業式の内容もホームルームで何を話していたかも覚えていなかった。この二日間ろくに寝れなかったからだろうか。

「帝人。お前何かあったのか?もしかして恋の悩み!?それならこの親友に!ラブのエキスパートである正臣様に話してみんさい!」

「違うよばか!」

いやなんら違わないようなでもそれだけは認めたくないようなしかも正臣に話してもしょうがないような

「…はぁ」

「なんだそのため息は!!…ホントになんか悩んでるんだったら相談しろよ」

「うん、ありがと。さて帰ろうか」

「言う気ないなお前!」

正臣のブーイングを聞きながら帰り支度をしていると携帯にメールの着信が入った。
そのメールの内容は―


「…正臣ごめん!今日は先に帰るね!」

「っえ、帝人!?」

僕は全速力で走った。



『―今君の家にいるよ☆by臨也』








「−っ臨也さん!」

「早いねえ。まだ学校に居る時かと思ったけど」

ない体力を絞り出して家まで全速力で走った僕は、息切れしながら部屋に入った。メールの内容通り臨也さんは部屋の中に居て勝手に僕が昨日買ってきたジュースを飲んでいた。

「もしかして走って来てくれた?」

「…メールの内容が、ひどく気持ち悪かったので…」

「失礼だなぁ」

さも傷ついたような顔をして全然傷ついてないような口ぶりで話す。

ああ、臨也さんだ。

ふっと力が抜けた。倒れそうになった体を受け止めてくれたのだろう。臨也さんの体温を感じた。

「っちょ、いきなりどうしたの!」

「…あー…臨也さんだ」

「……はい?」

うん。これだこれ。僕が昨日寝れなかった原因。
臨也さんが傍にいることに慣れてしまったから。当たり前になってしまったから。だから昨日家に帰った時はなんか眠れなかったのだ。

今こうして臨也さんがいることに体が安心したらしい。だんだんと睡魔が襲ってきた。

「…帝人君?もしかして寝る気?」

「…はい」

「え〜…?ちょっと大事な話があるんだけど」

「後に、してください」

「ええー…」

不満を漏らす臨也さんを余所に僕はこの二日間の睡眠不足を補うために目を閉じた















−−−−−−−−−
最終的に書いてる内容が大幅に変わってしまった。
臨也さんの話の内容はまあ、予行演習も済んだことだし、そろそろ本格的に一緒に住もうか!
とかそんなところだろうと思います。

だらだらとすいません(汗)
読んでくださりありがとうございました!

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