短編

□その冷たさ
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「臨也さん。手、みしてください」


俺は今帝人君の家にいて帝人君を正面から抱き締めている。何のことはない、いつものことだ。
暑苦しいです、とかいいながら最初は逃げようとするが、すぐに諦めて大人しく抱き締められている腕の中の少年を愛しく思っていると、突然そんなことを言い出した。

「手なんかみてどうするの」

「いいから見せてください」
「逃げる気なら無駄だよ」

「逃げませんから早く見せてください」

本当にたまに分からないことを言いだすのだから。まあ、そこが面白いところなんだけれど。
取り敢えず何をする気なのか興味があるので、右手を帝人君の腰から離して目の前に差し出す。

「両手でお願いします」

「…」

続けて左手も差し出した

すると帝人君は俺の手を自らの手で持って、うん、と一回頷いてから今度は頬っぺたに持っていく。

…流石の俺でも今の状況にはついていけず、戸惑った。

「えー…帝人君?一体何が…」

「冷たい…」

「…ん?」

「臨也さんの手、ひやっこいです」

ひやっこ…
言い方がなんかかわいかったがそれは置いとくとして、
ああそういうことか、と
今の言葉で少年の行動のすべてを理解した。

「昔っからそうなんだよ。普通の人より冷たいんだよねぇ」

「そうなんですか」

俺の手を頬っぺたにつけたまま帝人君は生返事をした。そしてふと考える素振りを見せてこんなことを言い出した。

「手が冷たい人は心が温かいってよく言うけどあれうそなんですね」

「ちよっ、帝人君、さりげなくひどいこと言ってる!」

太郎さんひどい!とチャットでの口調をつかうと帝人君は気持ち悪そうな顔をしたが、すぐ柔らかい笑顔にかわる。

「でも僕、そんな臨也さんの手、嫌いじゃないですよ」

あー…
突拍子もなくかわいいこと言いだすもんだから、さっきのひどい発言も吹っ飛んでしまう。

だがその後の、「夏限定ですけど」という言葉に少しイラッとしてそのまま深い口付けをお見舞いしてやった。







―――――――
臨也さんの手はひやっとしてそうだと勝手に思って…。
帝人君の夏限定と最後に言ったのは照れ隠しですね。

うわああああだめだ文才がない!
臨也さん視点むずいです。

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