12/26の日記

01:00
花蘇芳 9
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味方は多いに越した事はない。逆に不安要素は少ない方が。



「(少し煽ってみるか…。)」
「どうな……」
「『裏切者』として知れ渡ったアラシヤマの話だよな…。」



ゾクッ



辺りの空気が変わった。凍てつくような寒さが射し込む。



「『裏切者』ですか…」



恐らく聞き耳を立てていたのだろう、本部の外から感じていた気配が殺気へと変わる…



「あの人は、アンタをあんなにも信頼してたのに…なのにアンタはそんな人を『裏切者』と呼ぶのか!」


氷室の背後に氷槍が形作られていく…



「許さない…これでもっ!?」
「させないっちゃ!」
「な゛!?」
「甘いっちゃよ。」



作られた氷槍がみるみる内に小さくなっていく。

転がる下駄には『快晴』の二文字。



「くっ…」
「氷に太陽熱とは考えたな。」
「僕じゃないっちゃよ…。」
「どう言う事だ?」
「アラシヤマがやってたやり方だっちゃ。」
「そんくらいにしとくべ!」
「離せ!アンタ達も気に入られてたのに、コイツと同じなんだろ!!隊長の事を裏切者だって思ってんだろ!?」
「思っちょらん!」
「!!」
「氷室君だったよね…ここに居る人は皆、誰一人アラシヤマの事、裏切者だなんて思ってないよ。」
「な…に言って…?」



アラシヤマの敵だと思い攻撃を仕掛けてきたのに、それが敵でないと言われても信用出来ねぇんだろうが…



「兎に角、他の奴らも落ち着かせろ、話はそれからだ。」
「だいたい、シンタローが変な煽り方するから紛らわしい事になるんだっちゃよ!」
「コイツらの覚悟が見たかったんだよ!」
「覚悟…どう言う意味ですか?」
「お前達がこの状況下でも、彼奴に付き従うか、掌を返すか確認したかったんだよ。」



これだけいる団員を敵に回した彼奴に付いていけるかどうか、信じられるかどうか…



「そんなの決まってます。俺達は何があろうとあの人の味方でいると誓っていますから。」
「安心しろ、コイツはたった今、古参の幹部相手に、現状最悪なアラシヤマの擁護をしてきたところだ。」
「ぇ…」
「今は、彼奴が事を起こした理由を何か考えて、説得できねぇか話してるトコだべ。」
「逆にソレが出来なきゃ大変なんじゃけんのぉ。」



寒々しかった気温が戻っていく。ソレを合図に本部を囲んでいた殺気も消えた。



「総…帥…?」
「ま、そう言う事だ。」
「失礼しました!先程の非礼はお詫びさせていただきます。ですから、俺達にも手伝わせて下さい!」
「此方こそ。早速だが、噂と事実の相違点、彼奴と接触した団員の会話内容や状況について詳しく調べてくれるか。」
「畏まりました。」
「数が多くて大変だけど頼むな。」
「お任せ下さい!」



やっぱり彼奴の部下なだけあって、仕事のスイッチのon/offがはっきりしてやがる。



「それじゃ、情報が集まるまでは僕の仕事だっちゃね。」
「どう言う事だ?」
「制圧が完了したのがシンタローが出た夜。知らせを聞いてから戻る迄に一日。もうすぐ三日目の夜が来るっちゃ。何か動きがあったとしてもおかしくない頃だっちゃ。」
「何をする気なんじゃ?」
「隠密工作は僕の十八番だっちゃよ。」
「忍び込むんだべか?」
「あん根暗の顔でも拝んで来るっちゃ。」



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