10/05の日記

11:33
花蘇芳 6
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「アラシヤマが敵に寝返るなんて、そったら事する訳ねぇべ!」
「そうじゃ!彼奴がワシらを裏切る訳無いじゃろう!!」



そうだよな。話を聞いたとしても俺だって信じられない…いや、信じたくねぇ。



「…でも、シンタローまで言うって事は何か確証があるって事っちゃろう?」
「あぁ。彼奴に巧く騙されて外に出された奴も、立ち向かってオとされた奴も居る。序でに言うとグンマんとこの奴等みたいに話を聞いた奴もな。」
「だったらグンマ博士の言う様に、退っ引きならねぇ理由があるに違ぇねぇべ!」
「しかし、退っ引きならない理由っちゅうのは何かのぉ?」
「…そこまでいくと、例え被害が最小限だとしても正当な理由が無ければ擁護すら出来ないぞ。」



グンマの話通りと仮説を立てるミヤギ達にキンタローまで乗ってくるとは思わなかった。コイツ結構頭固いから、列記とした理由でも突きつけなきゃ味方につけるのは難しいと思ったんだけど…



「キンちゃん、信じてくれるの…?」
「まぁな、今の話の方が信憑性が高い。それにシンタロー、何か心当たりがあるんじゃないのか?」
「「「!?」」」
「シンちゃん、どう言う事!?」
「何ぞ知っちょったんか!」
「先程からずっと上の空だろう。何か気付いた事でも、あるのか…?」
「あぁ、俺が予兆を見逃した、いや、放置したんだ…。」



あの日、彼奴は明らかにおかしかった。傍に居ても上の空。普段の彼奴からは出ないような弱気な言葉。理由も詳細も告げない、一方的な約束。



「〜何処を取ってもオカシ過ぎた。」
「彼奴が助けを?」
「『もしも助けを求めて手を伸ばしたらどうする?』から始まるifゲームみたいなもんだけどな。」
「それ…何て答えたの?」
「グンマ?」
「答えて。多分それ、凄く大切な事なの!」



大切な事と言われても、そんなに興奮するような事なのか?



「手ぇくらい差し伸べてやるって、状況が悪化してようが、俺もコイツらも手ぇくらいとってやるって…。」
「ホントに?良かったぁ〜。」
「何がだよ?」
「アラシヤマは昔から『助けて』って言えない子だったから…例えifゲームだとしても『助けて』って言ったなら応えてあげなくちゃいけなかったの。」



言われてみれば彼奴の口から『助けて』なんてふざけてる時くらいしか聞いたことねぇ…



「それって何時の話だらぁか?」
「…一昨日。」
「一昨日だったら彼奴は朝から走り回ってた筈だべ。」
「忙しいっちゅうて駆け回っとったのぉ。」
「シンちゃん、何時話したの?」
「それは…な?」
「夜、一緒だったっちゃね?」
「まぁな。」



寝た後とか、流石に言いづらいけど、朝から走り回ってたっつー事は既に事を起こす準備に入ってたって事か。



「…彼奴のことだから綿密に作戦を練った上での行動だろう。」
「そうじゃなきゃ、無血制圧なんて出来ないっちゃよ。」
「重傷者及び死傷者無し、か。」



喜ばしい筈の事実が、苦々しい現実を突き付けていた…。



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