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□五
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緋衣草 五


アラシヤマをドクターに見せてから、何かに理由をつけてはロッドが子供を訪ねて来るようになった。


「物言わぬ子供の何がそんなに気にかかる?」

「いや、マーカーちゃん、何も本人の前でそんな事言わなくても…」



僅かに肩を揺らした子供は聞こえなかった振りをしている風だった。



「手が掛からない分楽だろう?」

「普通は言いたい事が言えない分、汲み取ってやったり、手を掛けるもんだけど…」



手を掛ける…か。

現にロッドはこどもの口に食糧を運んでいる。初めは拒んでいた子供も今では鳥の雛の如く、出された食事を食べさせて貰っていた。


「アラシヤマ、何故自分で食べずソイツの手を煩わせる?」



訊ねるとアラシヤマはピタリと口を開かなくなった。



「マーカーちゃんたら、口調がキツいから。」

「な゙…」

「あーちゃんは食べ溢しちゃう方が多いから食べさせてあげるんだよねー?」




どう返事を返すべきか迷っている様子だったが暫くした後頷いた。



「マーカーだってアチコチ掃除するより楽じゃない?」



言われてみれば此の子供は溢すだけでなくはねらかしたり、跳ばしたりする。決してわざとやってるわけでも、気を付けていないわけでもなさそうなのだが、どうにも詰めが甘いらしい。



「そうかもしれないな…」

「んじゃ、俺とはもう帰っから後ヨロシク!」



そう言い残し、此方の抗議の声も聞かずに帰って行った。


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