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□二
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緋衣草 二
子供を拾って凡そ半月が過ぎ、私の家には子供の物が増えた。
相変わらず食事をするとアチコチが汚れる。今は柔らかい固形物も口にするようになった。
ドンドンドン
扉をけたたましく叩く音がする。
相手が誰かなど扉を開けなくても誰か予想はつく為気は進まないが、此のままでは扉を破壊されかねない……
「…仕方あるまい。」
扉を開けると同時に静寂とは無縁の輩が上がり込んでくる。
「ったく、居るなら居るで早く開けろって…。」
不躾な訪問者は五月雨にあったらしく、全身ずぶ濡れとまではいかないものの水を滴らせながら上がり込んできた。
仕方がないのでタオルを貸してやる。
「濡れたまま動き回るな、部屋が汚れる。」
「そんなことより、マーカーちゃんの隠し子ちゃんは何処よ?」
「隠し子…?あれは断じて私の子ではない!いいな?」
「はいはい。んで、そのお子ちゃまは何処よ?」
「子供なら其所に…」
さっきまでリビングに何をするでもなく座っていた筈だった…
子供が消えた?
部屋にも窓も開いた形跡はない。
「…恐らく貴様が来たから隠れたのであろう。」
「えぇー!」
「見たければ勝手に捜して早々に帰れ!」
「酷っ!…んで、お子ちゃまの名前は?」
「…知らん。」
「は?」
「知らんと言ったのだ。」
ロッドに言われるまで気にもしなかったが、私は未だに子供に名前を聞いていなかったか…
「もうそろそろ半月って聞いたけど聞いてないの?」
「あぁ。」
「呼ぶ時はどうしてんだよ?」
「この家には私とあの子供しか居ない。何か声を掛ければそれに応じて反応する。」
そう、呼ぶ必要がないから聞きもしなかったのだろう…
「マーカーちゃん…冷たすぎない?」
「別段変わらないが?」
「普通は子供には優しくするもんっしょ。」
辺りのクッションや窓等を動かしながら子供の捜索を開始した。
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