■□ LONG □■
□ 肆
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体が痛む。心なしか寒気もする。
いつの間にか夜になったようで月が窓から覗けていた。
「お饅頭みたいやなぁ……」
綺麗なお月さんが食べ掛けのお饅頭にみえるんはきっと、腹の虫が頭ん中に悪戯してるせいや…。
朔日草 肆
地下のお家は静かやった。出入り口には新しゅう扉が付けられ、外から鍵が掛かっとる。鍵がないからお母はんは此所に来られんようにならはった。
此処での暮らしはこの前までよりも悪化しはる。『お母はんをたぶらかさんように』と躾をしとるんやて。
「…お饅頭お月さん、降りて来ぃひんかなぁ。」
お月さんはいつも自分を見ていてくれるし、優しゅう光で照らしてくてはる。自分の所に降りて来てくれたるんやったら、一緒にお喋りしてくれるかもしれへん。
「!」
誰か来た…
ガチャ
鍵が開きはったからお母はんやない……
ギィ
「…大人しゅうしとるみたいやな。」
静かに頷いた。肯定の意を伝えるために。
「今日は話があってきたんや。」
正直、驚いた。やって来たのはいつもの恐い男達ではなく、一人の貫禄のある老婆だった。
たしか、「おかん」という人…旦那はんが、そう呼んでいた気がする。
「お前を此所から出したる。」
「…!?」
「……出たないんか?」
何を言ってるかが解らなかった。
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