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□ 序
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炎を体の内に宿らせる、幼い子供が居た。子供は母親と旦那だけに愛されて暮らしていた。



朔日草 序





その子供は京都にある、名の知れた料亭に住んでいた。

料亭には地下室があり、地下室内にある牢には少し大きめの明かり取りがあった。明かり取りのみの光が地下室に射し込んでいた。


その、何時も薄暗く、外の様子も陽の光も地上に比べてほんの僅かにしか入らない空間が彼の部屋だった。


幼い子供にとって、錠の開いた地下牢は己の部屋、それ以外の空間は家、水回りは流しや風呂で、唯一地上に繋がる、角度の急な柵の無い階段は遊具であった。

その部屋で大半の時間を共に過ごしてくれる『お母はん』と、『旦那はん』の存在が、彼にとって世界の全てであった。




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