■□NOVEL□■

□法螺吹き日和
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「わて、結婚するんどす。」



コイツは何を言っている…?



「祝ぅてくれますやろ?シンタローはん。」




法螺吹き日和





事の発端はなんて事はない一枚のグリーティングカードだった。
可愛らしい封筒の送り主はウチを贔屓にしてくれてるトリス国の大統領。結構力の有る国ながら、人柄の良い上客だ。


俺らが眺めているのは同封された一枚の写真。



「相変わらずのベタベタ振りだべ…」
「本当アツアツだっちゃね。」
「てめぇら…他人事だと思って!」
「他人事だから楽しいんだっちゃ♪」



写真の中の女性は件の大統領の愛娘アリシア。父に引っ付いて、何度か本部にも来た事がある。過剰なスキンシップが好きな彼女はあろう事か俺に腕を回し、頬に口付けている。



「シンタローにこんな事してる写真なんか見せたら面白くなるっちゃよ。」
「面白くねぇよ!」
「…それは流石にアラシヤマが可哀想だべ。」
「キーキー騒いで煩そうだっちゃね。」



煩そうで済みゃぁいいんだけどな…



「『わてのシンタローはんになんて事しとるんや!』とか言いそう騒ぎそうだべ。」
「『わてというものがありながら!!』とか言って呪われそうだっちゃ…」



呪うどころかにこやかに別れを告げられそうな気がするんですけど…



「エイプリルフールだし騙してやれば良いっちゃよ♪」
「ジョークで済まねぇだろ!」



バタン



「シンタローはぁんVv」
「げっ!」



相変わらず間の悪い奴。



「噂をすればなんとやらだっちゃね…」
「噂?」
「何でもねぇよ。それより何か用があんじゃねぇのかよ?」



これ以上話してっと面倒くせぇ事んなりそうだから、早々に話題を変えた。



「そうどした。シンタローはんに話があったんどす!」
「あんだよ?」
「…それ、今隠したヤツ、なんどすのん?」



チッ!目敏い奴。上手く書類の中に押し込んだのに…



「…何でもねぇ。」
「嫌どすなぁ、そない隠し事せぇへんでも、グリーティングカードぐらいで騒いだりしまへんぇ?」



グリーティングカードだって分かった上で聞いてくる辺り質が悪い。



「どないして隠したんか気になっただけどす。わてに見られてまずいもんでも書いてはるん?」
「…てめぇには関係ねぇだろ!」
「!!」



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