■□NOVEL□■
□夜なべ
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夜なべ
「なぁ、お前何やってんの?」
「見て分からへんの?編み物どす。」
「俺が聞いてるのは、勤務時間内になに堂々と内職してんのか聞いてんだけど?」
時刻は13時30分。仕事も落ち着きだす昼下がり。ただでさえ仕事の多いこの部署もいつもより和やかな雰囲気である。
「嫌やなぁ、シンタローはんたら。わては今休憩中どすえ。」
「休憩ね…」
確かに仕事をしているとは到底見えない。書類一つ無い整理されたデスクの上には所狭しと置かれた料理に菓子の山。洋風、和風、中華風と纏まりの無いラインナップが揃っている。
「お前にしては珍しく散らかしてんのな。」
「この子らが土産やってこうて来てくれましてん。ここんとこ、仕事も忙しゅうなるまで引き受けるって持ってってしもうてな。…せやから、御言葉に甘えさせてもろうて休憩とらしてもろうとるんどすえ。」
そう言いながらも、編む手を止めることなく菓子を摘まむ。
恐らく一口サイズの菓子ばかりなのは、編み物をしながらでも手を汚さずに食えるものをチョイスした、部下たちの心遣いなのだろう。
「お前、よく手元も見ずに編めんのな…」
「そんなん慣れどすえ。」
確かに慣れてしまえばそう難しくもないのかもしれない…
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