■□NOVEL□■
□扉を開けて
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「なぁ、G。マーカーちゃんトコにあーちゃん来てからどん位経った?」
「ほぼ四ヶ月ぐらいだと思うが…」
「だよなぁ。」
つい最近、マーカーちゃんのトコに可愛らしい幼児が暮らし始めた。幼児と言ってもそう見えるのは見た目だけで、実際は…幾つだったか覚えてないけど、十分少年と呼べるお年頃だった筈。
「…みえねぇよなぁ。」
「おい、ロッド。さっきから何の話だよ?」
「いやぁ、マーカーちゃんってば、あの子にも手厳しいのかと思ってさ。」
「は?」
時折、あの子は子供と思えない言動をする。それこそ、俺なんかよりもずっと大人びている時だってある。
「なんか、あーちゃんってあんまり子供っぽくないじゃない?」
「まぁ、拾った場所も場所だし、面倒見てんのがアイツだしな。」
「俺さ、あーちゃんは言わないだけで、実は甘えたいんじゃないかと思ってたりするんだよね。」
「マーカーにか?」
「そう!其処だよな、問題は。あのマーカーちゃんが子供育ててるってだけでも吃驚なのに、相手があんなちみっこだなんて……」
「大した事じゃねぇだろ?言う事聞くし、大人しくて手ぇかかんねぇんだからいいじゃねぇか。」
「だからそれが心配なんだって…」
弟子って言ってもまだ修行も始まってないし、甘えたい盛りのちみっこなんだから、うんと甘やかしてやるべきだと思うんだよね。
「いや、だってさ、子供なんだからちょっとくらい我が儘言ってもいいっしょ?」
「子供をあやすマーカーか……俺には想像がつかない。」
「ゔっ!言われてみると…そうかも。」
マーカーは典型的な美人ちゃんなんだから、笑ったら綺麗だと思うんだけど、微笑ましく子供をあやす姿なんてまったく想像つかねぇわ。
「子供ってさ、もうちょい騒がしくない?」
「それは個人差もあるだろう。」
「隊長の甥っ子ちゃん逹は?」
「一人は生意気だし、もう一人は直ぐ泣くって、てめぇだって知ってんだろうが。」
知ってますとも…シンタロー様は典型的なガキ大将って感じで、グンマ様は甘えっ子で泣き虫だけど二人とも真っ直ぐな優しい子だって事はさ。
「……でもさ、俺、何度もあーちゃんに会ってるけど、見たこと無いんだよね…」
「何だよ?」
「……あーちゃんの笑った顔。」
「!?」
「泣いてる顔も、怒った顔も。」
多分此れは隊長達も同じ筈だ。マーカーの前では違うのかもしれない、けど、少なくても俺はあーちゃんのそんな顔一度も見たこと無い。
「それも…個人差なのか?」
「育った境遇が違いすぎんだろ。アイツとは。」
「でも、あれじゃ、まるで…」
感情の無い人形みたいだ…と思った。
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