■□NOVEL□■

□白妙菊
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彼奴は今、何を言った?
知っているだと……



「自分の言ってる意味を解ってるのか…」

「……ハァ、心友っちゅうんが嘘やっちゅう事位、あん島に居った頃から解っとりますぇ。」

「…気付いていたのか。」

「わてはそないに頭悪ぅありまへんぇ。」

「ならば何故、嘘だと知りながらも騙された振りを続ける?」



理解出来ない。
嘘だと知りながら、
騙されていると気付きながら、
何故あんな言動が出来る?



「……ただ、嬉しかったんどす。例え嘘でも。」



『例え嘘でも、シンタローはんが友達やって言うてくれはったんが、えろぅ嬉しかったんどすぇ。
それに、あの島やったら騙されとってもええと思いましてな。』

そう言って、彼奴は微笑った


一瞬、言葉を失った。

彼奴は普段の暗さからは想像もつかない綺麗な笑みを浮かべていた。シンタローと居る時ですら見掛けた事の無い、微笑みとでも言うのだろうか。其れはあまりにも儚げで哀しく、消えてしまいそうだった。



「……あの島か。」

「へぇ。あの島は優しすぎた。そんな嘘も気にならへん位、誰にでも優しゅう所やったんどすぇ…あ、勿論わてにとってもや。」

「其れなのに俺は、あの島を…」

「そうどしたな。でも、中から見てはったんでっしゃろ?あのお人を通して。」

「……あぁ。」



シンタローを通して見たあの島は、常に優しく皆楽しそうだった。
あの時の俺は、あの島を含めて、世界の全てを破壊したかった。俺を閉じ込めていたシンタローも世界も全てを恨んでいた。

しかし、シンタローを通して見たあの島では、皆笑っていた。
この殺伐とした世界の中で失ったものが、あの島にはあったと言う事か。

何か引っ掛かる……


━━━あの島やったら騙されとってもええと思いましてな━━━


此れは矛盾ではないのか?
彼奴の話は釈然としない。





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