■□NOVEL□■

□白妙菊
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彼奴がD地区へ遠征に向かってから、もう二週間になる。
その間、俺達もシンタローの仕事に手を貸していた。が、何時もよりシンタローの負担が増えていたのは確かだ。
彼奴に仕事を押し付けて居た分、実は助かっていたのかもしれない。此れが『怪我の功名』というものか。



「……ん?珍しい事もあるものだな。」



いつ帰ってきたのか、何時も仕事に追われ、自分のデスクにかじりついているかシンタローにストーカー紛いの事をしている彼奴が休憩室で休んでいる。



「いつ戻ったんだ?」

「ついさっきどすぇ。シンタローはんにも報告済みや。それより、あんたはんがこないな所に来はるなんて珍しおすなぁ?」

「珍しい姿が見えたので寄ってみただけだ。」

「珍しいて……休憩室は出入り自由な筈どすぇ。それとも、わてが此処に居ったらあきまへんの。」

「いや、そう言う意味ではない。」



全く面倒な奴だ。
シンタローの言う事は残念な程好意的に受け取るくせに、俺に対してはやたらと食って掛かる。
あの島での事が原因かと思い、以前訊ねてみたが、それも違うと返されたのだから余計に意味が解らない。



「せやったら、早ぅ戻って仕事しなはれ。」

「……お前に幾つか聞きたい事がある。」

「何ですのん?」

「何故俺にばかり噛み付く?」

「……またどすか。
わてはあんたはんの事が嫌いで噛み付いとるんやなくて、こうゆう性格なんどす。他のお人かて同じや。」

「しかしシンタローには」

「シンタローはんは別どす!一緒にせんといて!!
…他に聞きたいのは何どすの?」

「何故、シンタローに執着する?」

「そんなん決まってはるやないの、心友だからどすぇ!」

「あんなに邪険にされているのにか?」

「シンタローはんは照れ屋やさかい仕方ありまへんなぁ。」

「八つ当たりだってされているだろう?」

「ストレスは溜めすぎたら体に毒なんどす。」

「仕事だって押し付けられているだろう…」

「キンタロー、あんたはんさっきから何が言いたいん?」



何故だ?
邪険にされているのも、八つ当たりを食らっているのも分かっていながら、何故言動を変えようとしない?

理不尽だとは思わないのか?



「…………俺には、彼奴がお前の事を心友だと思っているようには…。」

「……フフ、そらそうでっしゃろ」

「な゙?」

「そんなん、知っとりますぇ?」



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