■□NOVEL□■
□白妙菊
2ページ/8ページ
彼奴がD地区へ遠征に向かってから、もう二週間になる。
その間、俺達もシンタローの仕事に手を貸していた。が、何時もよりシンタローの負担が増えていたのは確かだ。
彼奴に仕事を押し付けて居た分、実は助かっていたのかもしれない。此れが『怪我の功名』というものか。
「……ん?珍しい事もあるものだな。」
いつ帰ってきたのか、何時も仕事に追われ、自分のデスクにかじりついているかシンタローにストーカー紛いの事をしている彼奴が休憩室で休んでいる。
「いつ戻ったんだ?」
「ついさっきどすぇ。シンタローはんにも報告済みや。それより、あんたはんがこないな所に来はるなんて珍しおすなぁ?」
「珍しい姿が見えたので寄ってみただけだ。」
「珍しいて……休憩室は出入り自由な筈どすぇ。それとも、わてが此処に居ったらあきまへんの。」
「いや、そう言う意味ではない。」
全く面倒な奴だ。
シンタローの言う事は残念な程好意的に受け取るくせに、俺に対してはやたらと食って掛かる。
あの島での事が原因かと思い、以前訊ねてみたが、それも違うと返されたのだから余計に意味が解らない。
「せやったら、早ぅ戻って仕事しなはれ。」
「……お前に幾つか聞きたい事がある。」
「何ですのん?」
「何故俺にばかり噛み付く?」
「……またどすか。
わてはあんたはんの事が嫌いで噛み付いとるんやなくて、こうゆう性格なんどす。他のお人かて同じや。」
「しかしシンタローには」
「シンタローはんは別どす!一緒にせんといて!!
…他に聞きたいのは何どすの?」
「何故、シンタローに執着する?」
「そんなん決まってはるやないの、心友だからどすぇ!」
「あんなに邪険にされているのにか?」
「シンタローはんは照れ屋やさかい仕方ありまへんなぁ。」
「八つ当たりだってされているだろう?」
「ストレスは溜めすぎたら体に毒なんどす。」
「仕事だって押し付けられているだろう…」
「キンタロー、あんたはんさっきから何が言いたいん?」
何故だ?
邪険にされているのも、八つ当たりを食らっているのも分かっていながら、何故言動を変えようとしない?
理不尽だとは思わないのか?
「…………俺には、彼奴がお前の事を心友だと思っているようには…。」
「……フフ、そらそうでっしゃろ」
「な゙?」
「そんなん、知っとりますぇ?」
**********