■□NOVEL□■

□薮蘭
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薮蘭




6月某日、天気は曇天。
書類の貯まった総帥室から嫌味な声が響いている。



「なして忍者はんと一緒に行かなあきまへんの?」

「こがいな任務、まで根暗と一緒なんて…足手纏いだっちゃ!」

「それは此方の台詞どす。戦場でまで忍者はんのお守りやなんて…。」

「そんなの、シンタローもアラシヤマの部隊じゃ不安だって言ってるんが分からないっちゃか?」

「シンタローはん、折角やけど、わてんとこの子ぉ達は皆優秀やさかい、忍者はん達の出る幕なんかあらしまへんぇ。」



顔をあわす度に喧嘩が絶え無い事で有名な二人。
しかし、任務達成率が一番高いのもこの二人なのである。



「…お前達、いい加減にしろっ〜の!此れは決定事項だと何度言わせるんだ!」

「せやかて忍者はんは!」

「僕ぁアラシヤマと組むなんてごめんだっちゃ。」

「此方こそ願い下げどす!!」



今回の俺の任務は、
此の二人に悟られぬように、グンマの発明品の試験をする事…



「……てめ〜ら、何時までも餓鬼じゃねぇんだから、文句ばっかり言ってねぇでさっさと出発しやがれ!!」



勿論、投書の実態調査も兼ねているから、総帥の許可を得ての同行だ。



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場所を変え、防音の聞いていない艦内。団を出発してからひたすら続く、嫌みの応酬。



「よくもまぁ尽きないものだな……」



しかし、それを聞く部下たちの反応はキッパリと別れていた。


『上司達の声に困惑し何とか止められないかと気に病む部下』
『平然と自分の遣るべき事に取り組む部下』


各々の隊色が垣間見えるようだ。

そんな彼達に対する他団員達からの投書がある


『常に揉めているにも拘らず、完璧にこなす姿に感服するし、尊敬している。
…が、二人の醸し出す険悪な空間の性為で実働以上に、精神的に滅入ってしまう。』

っという内容のものだ。



「やっぱり、こがいな作戦に僕らを組ませるなんて、シンタローも考えるべきだっちゃ!」

「何言うてますのん!総帥かて考えも無しにわてらを組ませる訳あらへんやろ。」



残念ながら、今回二人を組ませたのは此の調査の為に多少無理を言ったからだ。



「しかし、予想以上だな。」



人当たりの良いトットリの滅多にに見ない姿に、報告に行く部下も肝を冷やしているようだ。

此のような事態に良くも悪くも馴れた、アラシヤマの部下が報告に向かうのが常となっているらしい。



「ま、根暗の作戦なんか僕ぁ達以外じゃ性悪過ぎて実行出来んわいや。」

「阿呆、わてが忍者はんのレベルに合わせとりますんや。」



トントン

「報告致します!間も無く、ヒトフタマルマル、ポイントA到達致します!」



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