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□ 参
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事件の後、少年の日常は一変した。



だいたい日に一度、食事を持った親戚がやって来て、挨拶代わりに


「なんやまだ居るんか?」



などと言ってくる。出られない事など分かっている癖に。


その際に眠っているなら、水をかけて叩き起こし、起きていたなら、何かにつけて嫌みを言う。



そのまま食事を下げられてしまう事や、引っくり返されたりする事も多々あり、理不尽な怒りをぶつけられる事もあった。

能力のコントロールが出来ずに発火し、物を投げられたり、暴力を奮われることも珍しくなかった。


アラシヤマが何度謝っても、『躾』と言う名の迫害は終わらなかった。






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堪えきれずに、泣いてしまうアラシヤマの声を聞き付け、母親が駆け付ける事もあった。



身体中に包帯を巻き、動かない足を引き摺り、親戚達の制止をを振り切って、階段を転げるようにしてやって来る。



暴れた為か開いた傷口から血を滲ませながら、外敵から我が子を護りにやって来るのだ。



自分を守る為に親戚と対峙してくれる母、勿論嬉しいし感謝もしている。
しかし、それ以上に申し訳なく感じていた。




『自分が傷付いた母に無理をさせてしまっているから、母の怪我は治らない。』

という罪悪感の方が大きかったから。




其れは思い込みに近い考えだったとは言え事実でないとは言い切れなかった。


無理に身体を動かしたり、大声で口論をしたりする為、傷は塞がる先から開いていて、とてもではないが、快方に向かっているとは思えなかった。





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そして彼は決めたのだ。親戚にどんな扱いをされようとしても

大人しくそれを受け入れよう。
出来るだけ我慢しよう。
例え、自分が悪くないとしても謝ろう
大切な物は体から離さなければ見付からない


とそう思った。




きっと自分が泣かなければ、母は安心するだろう。安静にしていられるだろう。



何よりも大切なのは母の怪我を治す事だから…。




だから、自分さえ我慢すればいい。



其れが幼いアラシヤマの導き出した結論だった。







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