天使と悪魔と神様と
□氷の出逢い
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地面に叩きつけられる衝撃が、傷ついた身体に響く。
小生でなければ確実に即死だったろう。
神との戦いに敗れ、遥か彼方、上に存在する天界から地の底まで堕ちてしまった・・・。
小生は瀕死の身体を無理やり起こし、辺りを見回す。
寒く、冷たい氷の世界が広がっていた・・・。
その上ここまで深く堕ちたのは小生だけのようで、共に戦ったパイモン達の姿は見当たらなかった・・・。
「ここ・・・は・・・。」
瞬間、小生の背中を悪寒が走った。
環境から来る寒さではなく、もっと別の・・・神に向けて剣を構えたときと同じ、何か強大な力を感じ取ったときのそれと似ていた。
このような極寒の地に何かいるとは思えない・・・。
いたとしたら小生と同じく、天から堕とされた者だろうか?
「誰か・・・いるのか・・・?」
小生は警戒しつつ言った。
先ほどの悪寒といい、共にいた天使の中でこれほどの魔力の持ち主は小生の知る限りいなかったからだ。
不意に響く足音、小生は音のした方向を見据える。
そこには、小生と全く同じ姿の男が立っていた。
「・・・!!!」
男は暫く小生を見据え、口を開く。
「貴様の姿を模して仮の身体を創らせてもらったが・・・全く同じというのは後々面倒だな・・・。」
そう言うと、男は黒い霧に包まれる。
霧が晴れたときには男の姿は変わっていた。
髪は血を連想させるような紅、頭部には竜のような角、背中からはコウモリの様な黒い翼が生えていた。
仮の身体を創ったことといい、その姿を一瞬で変えた事といい、明らかにこの男が只者ではない事を意味していた。
「お前・・・何者だ・・・?」
「名を尋ねるときは格下のお前から名乗るべきだろ?」
「小生が・・・お前より格下だと・・・!?」
男はしゃがみ込み、小生の顎を掴む。
「あの創造神も落ちぶれたものだな・・・自らに剣を向けるような人形を作るなど・・・。」
「黙れ・・・!小生は・・・あんな奴の人形なんかじゃ・・・!」
「まぁいい・・・神を憎むものは大歓迎だ・・・。
元天使長のルシファー・・・。」
「!!・・・お前・・・何故小生の事を・・・!?」
「創造神が最も愛していたものだ・・・。知らないわけがない・・・。」
男は小生を抱きかかえる。
無論、抵抗しようと思ったが、そのような力は残っておらず、されるがままに連れて行かれた。