裏切りは僕の名前を知っている
□そばにあるモノ
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二人で夜空を眺めていた。
星は雲に隠れて今は見えない。
フッと焔椎真が愁生の手に自分の手を重ねた。
「・・・?
どうしたの焔椎真。」
愁生は焔椎真に優しく笑いかけると重ねられた手を握った。
「っ・・・愁生。」
焔椎真の瞳から涙が流れ落ちる。
「どうしたの焔椎真?」
「愁生・・・俺は必要ないのかな。
愁生もいつかは俺から離れてくのか・・・?
俺が嫌いか・・・?」
「どうしてそんなこと聞くの?焔椎真らしくないよ」
愁生がそっと焔椎真の頬に触れる。
「俺は人殺しなんだ・・・。俺のそばにいたら愁生を殺してしまうかもしれない。だから・・・愁生は俺のそばにいたらダメなんだ。俺は愁生に死んでほしくない・・・!!」
焔椎真は溢れ出す涙を服の袖で拭いながら愁生に訴えるようにして言った。
「ひどいな焔椎真は・・・。俺は焔椎真がいないと生きていけないっていうのに・・・。
俺は大丈夫だよ。絶対に死なない。ずっと焔椎真のそばにいる・・・。」
愁生は焔椎真の体をそっと抱き寄せて優しく言った。
『大丈夫・・・俺達の生きる時間はずっと一緒だ。』
.アトガキ