裏切りは僕の名前を知っている
□黄昏のひととき
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放課後最後のチャイムが鳴り窓の外には闇がおちはじめていた。
パラ・・・パラ・・・
本に目を落とし、俺はドアが開くのにも気づかず、朝、焔椎真とした約束も忘れてしまっていた。
最後のページを読み終え、はぁ・・・と息をはきながら顔を上げると目の前に焔椎真のドアップの顔があった。
「!?焔椎真・・・
一体いつからそこにいたんだ?」
「30分前。
愁生全然気づかねぇから。」
少し・・・いや、かなり不満そうな顔で俺を真っすぐ見る。
沈黙が続き、最初に口を開いたのは焔椎真だった。
「俺より・・・
俺よりそんな本の方が大事なのかよ・・・?」
「え・・・?」
数回瞬きを、聞き返す。
「愁生、俺との約束忘れてねぇか?」
約束・・・―――――――――――――――あ。
「すまない。
すっかり忘れていた。」
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