羊 夢 物 語
□病院で。
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メイが手術室の前に戻ると、ちょうど手術中のランプが消えたところだった。
ドアが開いて執刀していた医師が出てきた。
「あの・・・あいつは・・・。」
「命に別状はありません。ご安心ください。」
医師の言葉に安堵のため息を付く。
「しばらくの入院は必要ですが、心配はいりません。」
医師の話を聞いている間に、理人がストレッチャーに乗せられて出てきた。
「理人・・・!」
メイが近寄ると、どこかに行っていた剣人もそう言いながら駆け寄ってきた。
「今は麻酔で眠っていますので。朝まで目を覚まさないでしょう。」
メイと剣人は一緒に病室へ向かった。
通された病室は、ホテルかと思うほど豪華な作りで、メイと剣人は思わず圧倒される。
さすが本郷グループ傘下の病院・・・。
後継者の執事ともなると、これほどの病室に入院できるのか・・・と、つい考えてしまう剣人。
メイを見ると、病室に一瞬驚いたものの、もう理人が寝ているベッドの横の椅子に座り、
心配そうに顔を覗き込んでいた。
「お前・・・その格好は?」
メイが見慣れない女の子らしい格好をしていたので、思わずそう聞いてしまった剣人に、
メイは一瞬だけ視線を向けたが、すぐに戻した。
その様子に、胸が痛む。
「あの双子の執事が勝手に用意した服だから。」
答えながらも、視線は理人に向けたまま。
「朝まで目覚まさないって言ってんだから、お前も少し寝たら?」
剣人の気遣いにも、メイは首を横に振った。
こんな時にヤキモチを焼いてる場合じゃない・・・。
しかし、どうしてもイライラしてしまう自分をガキだと思わずにいられなかった。
剣人は何も言わずに病室を出た。