羊 夢 物 語
□病院で。
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本郷グループ傘下の病院。
手術室前の椅子に、場違いなドレスを着たままメイは座り込んでいた。
剣人は落ち着くことができずに、どこかへ行ってしまった。
なんだかんだいがみ合っていても、やはり兄弟、心配なのだろう。
メイは両手を組んだまま、唇をぎゅっと結んでいた。
(ムリをしたんだ・・・。
あの怪我でデュエロなんかして、さらに傷を負って、
その上、その直後にルチア宮まで走ったんだから・・・。)
「ごめんね・・・私のために・・・。」
小さく呟いたメイの言葉と共に、涙が頬をつたった。
いったいどれくらいの時間が経ったのか・・・
ほんの数十分だったのかもしれないし、何時間も経ったのかもしれない・・・。
「メイ様。」
ふいに名前を呼ばれてメイが顔を上げると、そこには双子の執事が立っていた。
「あんたたち・・・。」
「お召し変えをなさってください、メイ様。」
「そのままでは、お身体が冷えてしまいます。」
確かに無機質な病院の廊下は寒かった。
でも・・・。
「ここから離れたくない・・・。」
少しでも理人のそばにいたかった。
苦痛に歪んだ顔を思い出すと・・・胸が張り裂けそうだった。
「しかし、その格好のままでは身動きが取れないのでは・・・?」
右近の言うとおりだった。
こんなにフワフワしたドレスでは、動きにくくてしょうがない。
メイは仕方なく立ち上がると、左近をこの場に残し、急いで着替えをしにいった。