The hand ties.

□第八章
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学校帰りに僕がすること。
まず、見回り。
まぁ、パトロールみたいなの。
携帯に連絡があった時は、仕事だから、僕はそれを実行する。
今日の仕事は無し。
ただ家に帰りつつ、見回りをすれば良い。

「お、いっくん」
そう言われて、僕は振り返った。
いつもながらの黒髪のポニーテール。
へそ出しキャミソールに、胸の辺りには包帯。
すらりと長い脚には、長ズボン。
どこから見ても美人と言える彼女は、五十嵐 旱(イガラシ ヒデリ)さんだった。
手に持ってるビニール袋には、アイス(主にスイカバー)がぎっしりと詰まっていた。
「あ、旱さん」
「いっくんは、今帰りか?」
「・・・そうですけど」
「一緒に帰ろうぜぇ」
「・・・はい」
僕がそう言うと、旱さんは僕の隣に来て、袋からスイカバーを一本取り出し、口に加えた。
「高校はどうだ?楽しいか?」
「まー・・・、楽しいですよ」
「ふーん」
「・・・」
旱さんはもう一本、袋からスイカバーを取り出た。
また食べるのか?!この人?!っと思いきや、僕にそれを差し出した。僕は、それを受けとって食べる。
「友達、出来たか?」
「うーん・・・。どうでしょうね?」
「なんだ、楽しいって言ったのいっくんだぜ?楽しく無いのか?」
「クラスは楽しいですよ」
「・・・どこが?」
「・・・、まぁ、色々と、ね」
「ふーん」
なんだこの人は。
聞く気無いんだったら、聞くなよ。
「・・・そういえばさぁ、お姫様、今日、起きたぜ」
「・・・、そうですか、それは良かった」
「・・・他に言うことねぇの?例えば『本当ですか?!大丈夫なんですか?!』とかさ」
旱さんは、僕の声を模写して、僕の目の前で演技する。
「・・・旱さんがそう言うのなら、大丈夫だってわかっていますよ」
「ふーん!」


「・・・一つ聞きたいんですけど、なんで、こんなにスイカバー買ってるんです?」
そう聞くと、旱さんは笑顔で答えた。
「いやー、馬鹿でのっぽな闇雲が、私のスイカバー食いやがってよぉ!その腹いせに、アイツから千円掻っ払って、買ってきたんよ」
満面の笑みだ。この人。

「きっと、闇雲さん怒ってますよ?」
「へーき、へーき!」




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