The hand ties.

□第三章
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繋義さんには、「場所がわかるまで、リラックスしていると良いよ」っと、言われたので、僕が部屋に帰ろうとしたとき、不知火(シラヌイ)さんに呼び止められた。そして、僕こと釘芒 壱葵(クギノギ イツキ)は、今、不知火さんに面と向かっている。
「あのぅ・・・。不知火さん?」
「なんや、壱坊?」
「僕に、なんか用ですか?」
「面渡せ」
「は?」
「せやから、面渡せ。いうとんねん。修理したる」
少々怒りながらも、「渡せ」と言うように、手を出した。
「は、・・・はい」
そういえば、この前、面の隅が欠けていた事を、思い出した。
「・・・どうぞ」
僕はそういって、面が入っているケースを渡す。
「壱坊が行く頃には、修理は終ってるさかい、後で取りにきぃ」
不知火さんは、にこやかに笑い、ケースを受け取ると、僕の髪をグシャグシャになるまで撫でた。そして、一通り撫で終った後、「ほなな〜」と言って、101号室から出て行った。
グシャグシャにされた髪を手で直し、101号室の部屋を見回す。ベランダへのガラス戸の近くで、日に当たりながら、双子のなおきとゆうきが、ぐっすり寝息をたてながら、寝ているのだ。まぁ、早朝五時から、闇雲(ヤミクモ)さんによる稽古を受けているのだから、仕方が無い。
僕は、二人にタオルケットをかけ、101号室の玄関へと向かった。
玄関付近では、食器を洗っている、結弥さんがいた。その横には、白い毛並みの狼・白夜が伏せをして寝ていた。
「あら?壱葵君、もう自分の部屋へお帰り?」
「はい、一応、休憩を。と思いまして」
「そう・・・。じゃあ、ちょっと待って」
そう言った結弥さんは、タオルで自分の手を拭き、冷蔵庫を開ける。
「部屋で食べてね」
冷蔵庫から取り出したモノは、包装された手作りクッキー(十枚入り)。結弥さんは、料理が好きなので、きっとこのクッキーも手作りなのだろう。と思いながら、僕はクッキーを受けとった。
「ありがとうございます。部屋で美味しく食べさせて頂きます!」
僕が、そう言うと結弥さんは、ニッコリと笑い、「どういたしまして。後で、感想聞かせてね」と言った。
そして、また、食器を洗い始めた。
僕は、靴を履いて、自分の部屋へと戻った。


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