The hand ties.

□第三章
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カーテンを完全に閉めきった、ほの暗い部屋で、小学六年程の身長の人がいる。
だが、身長以外は普通ではない。何が普通ではないのか?
ほぼ全身に巻かれた、少しだけ血の付いた包帯。右目と口だけが、包帯を巻いていない範囲。あとは長い袖のTシャツと半ズボンを着ているだけ。
頭の包帯から、はみ出た長い髪。荒く切った様に、長い髪と短い髪が伸びていた。
「キシシ・・・」と笑った時、玄関の扉が開く音がした。
「雷(ライ)、仕事は終ったかい?」
そういったのは、このマンションの管理人・関根 繋義(セキネ ツナギ)だった。
「てめぇが来る前に、全て終った」
と言った。雷と呼ばれる子供は、スッ。っと、メモを差し出した。
「おっ、センクー」
「“センキュー”だろ。・・・キシシ」
少しの沈黙。
「そう言えばさ、・・・久那ちゃんって、どんな子?」
繋義は、ワクワクしながら雷に聞いた。
「・・・簡単にリストカットしちまうやつ。・・・キシシッ」
それを聞いて、繋義は真剣な顔になった。
「・・・お前は昔から、関係をもった奴の事を、家族って言うよな」
雷は「キシシッ」っと、笑いながら、そういった。
「あぁ、当たり前だろ?・・・なんで、そんな事を聞く?」
すると、雷は「ギヒャヒャヒャヒャッ!!」っと、笑い出した。
「・・・君は本当に、変な笑い方をするね」
「まぁ、良いや。“久那”って奴は、おもしれぇぜ」
雷はそういうだけだった。
「・・・なんで、自分を追い込む様な事を、彼女はするんだ?」
少しの沈黙。雷は「ヒヒッ」と笑う。
「それが、能力だからだ」
「そんな能力、聞いたことは無い!」
繋義は、拳を床に叩きつけた。
「・・・まぁ、本人に聞けば良くね?・・・キシシッ」
繋義は、「あぁ、聞くよ」っと言って、部屋を出て行こうと、玄関の扉のノブに手をかけた。
「ああ、今回の俺を働かせた分の報酬だけどな―――」
「結弥ちゃん特製、アップルパイとチーズケーキ、一皿ずつだろ?」
「分かってるじゃねぇか。・・・キシシッ」
そして、繋義は部屋から出て行った。
一人取り残された雷は、笑う。
「キシシッ!あぁ、おもしれぇ!!」



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