The hand ties.

□第二章
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コンクリートで出来た、その部屋は暗く、少し肌寒い。部屋で唯一の光は、高い天井の近くにある、小さな鉄格子付きの窓の明かりだけ。
一人の少女が、小さな窓の下で、体育座りをしながら、うずくまっている。
シーン。っと静まり返った、その部屋で少女は思う。幼い頃、よく自分と遊んでくれた少年の事を―――。
いつもいつでも、側に居てくれた彼は、私の大切な人だった。いつでも、守ってくれたし、いつでも仲良くしてくれた。怖い犬に、襲われそうになった時だって、怖い癖に、私の為に立ち向かってくれた。そんな彼が、私は大好きだった。他の誰でも無く、彼が好きだった。いや、今でも私は彼の事が大好きだ。
だけど、あの日、私と彼は引き裂かれてしまった。
彼は、必死に私を護ろうとしたが、駄目だった。大の大人に五歳の子供が敵うはずもなく、彼は負けてしまった。
彼は今、どこにいるのだろうか?
そう思った時、唯一の出入口の鉄の扉の前で、誰かが立ち止まった。そして、鍵を開けるように、カチャカチャと音がする。
私は、それに反応して、手に、尖ったガラスの破片を持った。
ガチャンッ!という音がして、扉は開かれた。
そして、私は、大切な彼の名前を口に出した。
「いつきくん・・・」
そう言うと、私・黒神 久那(クロカミ ヒサナ)は、自分の腕にガラスの破片を当て、自分の血が出るように、勢い良く、腕を刺した。

私はここにいるよ?
髪を伸ばしたラプンツェルのように、髪を伝って、私のところまで―――。



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