The hand ties.

□第一章
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幼い頃、目の前で幼なじみが玖断使いに攫われた。
助けようと、もがいたけれど、力の差で負けてしまった。
五歳の頃の事なのに、鮮明に憶えている。幼なじみを最後に見た時の顔や、玖断使いの大きな手。
あれから、十年。
今は、宮城県にある『玖断管理事務局』でお世話になっている。
幼なじみ・黒神 久那(クロカミ ヒサナ)を見つけ出す為に。



季節は春。でも、暑さが増している六月。梅雨がまだだ、と言うのに蒸し暑い。僕こと釘芒 壱葵(クギノギ イツキ)は、ベランダのガラス戸を静かに開けた。
開けると同時に、涼しい風が部屋の中に入ってきた。「ふぅ」と、少し息を吐き、僕は畳の床に寝転んだ。大の字で、寝転がっていると、右手が今朝の新聞紙にあたった。
(今朝、借りてきたんだっけか)
そう思い、新聞を手に取る。表紙には大きな文字で、『今年で三十件目の被害!また解体(パーツ)の仕業か?!』と書いてあった。
「またか」と呟くと新聞紙を放り投げた。
『解体(パーツ)』というのは、ここ数年前から出没しはじめた、無差別殺人集団なのだ。普通の人間や、玖断使いでも、お構い無しに殺す。という行動に『玖断管理事務局』本部でも、手を妬いている。
新聞紙の着地と共に、玄関の扉が勢いよく開かれた。
「「いー兄、居ますかぁ?!」」
玄関付近で、大きな声が聞こえたと思ったら、張本人はドタバタと部屋に入り込んできた。おいこらお前ら、誰の許可を得て部屋に入ってきてんだ。とか、言いそうになったが、今は言わないでおこう。
入ってきた二人は、双子のなおきと、ゆうきだ。外見は、小学六年生程だ。双子だからといって、二人は対照的な服を着ている。
袖が長すぎるジャケット、膝下までのジーンズ。まぁ、この服を造った張本人は、今頃、花壇に水をあげに行っている頃だろう。
「いー兄発見!」「今日もダサいTシャツ着てる!」
ダサいTシャツと言われた。好きでこんな、背中部分に『平成』と大きく描かれた、Tシャツを着てるわけないだろう。
「おはよう、なおきとゆうき」
そう言うと、二人は同時に「「おはよう!いー兄!!」」と返事をしてくれた。
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