The hand ties.

□第三章
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「ひさなちゃん!一緒におまつりにいこう!」
五歳だった僕のこの言葉は、全ての原因だった。
もし、こんな事を言わなければ、僕たちは幸せだったのかもしれない・・・。



ふと、蒸し暑くなった感じがした。
「・・・?」
僕は、ゆっくりとまぶたを開く。
蒸し暑さの原因は、ガラス戸から入った光のせいだった。
ああ、いつの間にか、ガラス戸の近くで寝入ってしまったのだ。
僕は、携帯を取り出して、時間を確認する。
時間は、午後二時を過ぎていた。
全員が、101号室で会議をした時間が、昼前だから・・・。
あ、昼飯食べ損ねた。
ふぅ。っと僕は、小さなため息をつき、体を起こす。
外から入ってくる風は、涼しくて気持ちが良い。
「なんで、梅雨前なのに、こんなに暑いんだよ・・・」
あ、でも、今日の天気予報見てないしなぁ。
そう思いながら、僕は携帯を置いた。
その時、ベランダの方から、カタンッ。と音がした。僕は、疑問に思いながら、ベランダに出てみた。
そこにいたのは、一羽の小さな鳩だ。
不知火さんに懐いている、鳩だった。
『壱坊、101号室に早う来い』
不知火さん、お得意の腹話術。今日も、すげぇ・・・。
鳩に「今行きます」と言って、僕は部屋に戻り、置いておいた携帯を持つと、すぐに部屋から出た。


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