無題

□第九話 「未完成な私と完璧な貴方」
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――――――体育館――――――――――





「俺はジャージでいいんだけど・・だめなのか?」


ジンは暗闇で声を出す。
なんだか恥ずかしそうだ。


「駄目ですよ。先輩今日の主役なんですから」

「そうですそうです、いつも以上にカッコよくしなくちゃ」

「元がいいんだから磨きがいがありますよ」


女性が三人周りで口々にいいう。
すごく楽しそう。


「・・・・なんか毎年毎年・・・・慣れない」


ジンは体育館裏の小さな小部屋で女性のメイクや衣装を整えられていた。



前髪は上げられ後ろに流し、もともときれいな肌に少し色を塗り、目元にも少しメイクをする。
服装も黒いタキシードを着て別人だ。


周りにいる三人の女子は慣れた手つきで作業する。

ジンは服装にも慣れないのかぴるぴるしている。




「悪いな・・・毎年毎年・・俺なんか・・」


ジンは下を向きながら言う。



「・・なに言ってるんです」

「そうですよ」

「私たち楽しいんですから」



女子三人は笑う。

ジンはその言葉をホント嬉しそうに笑う。



「・・・ありがとう」




「・・いえ!」

「頑張ってください!」

「みてますから!」




三人も笑って背中を押す。



「さ、終わりです」

「来年にはジンさんが卒業してることを願いますか」

「ですね、無理でしょうけど」



「・・・ひでえ」



ジンは嬉しそうに三人を見た。

そしてまだ幕が閉まっている舞台に向かう。

マイクの所に立つ。



大きく息を吸い込んで落ち着く


「・・・(これで人がいなかったら泣こう・)」



そんな事を想いながら出番を待った。












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