ライチ短編
□どうしたって届かない
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二人の親友の、お互いを見る目の温度が変わっているのに気付かないはずがなかった。
いつからだったか、タミヤ君とカネダは友達というより、どこか恋人のような雰囲気を醸し出すようになった。
二人は気付かれていないと思ってる。周りの人だって知らないだろう。
でも、僕だけは違う。違うんだよ。
登下校はいつも一緒だった。帰りは横一列になって、今日あった事なんかの話題で盛り上がりながら、いつもと変わらない道を歩く。
何も、何も変わっていない。二人の目線だけを除いて。
「なあ、カネダ」
「……なに?タミヤ君」
タミヤ君がいつもの口調で話しかける。
見てよ。彼の熱を含ませた視線。
僕には向けられたことすらないようなタミヤ君の目が、カネダをまっすぐに捉えていた。
ずるいなあ。そう思った僕の心はきっと汚れてるんじゃないかなあ。
二人の世界は二人だけで完結していた。僕には、入る余地も権利もない。
でも、心に広がるどす黒い感情が、たまに、全てぶち壊しにしまいたくさせるんだよ。
やっぱり汚れてる。
何言ってんの、僕は馬鹿なの?
蛍光中は男子校だ。少しぐらいこういう関係になる人たちが居たって不思議じゃない。
それが、たまたまあの二人だっただけ。おかしくない。おかしくないんだ。
そうやって、明るく考えてみる。
でも、そうすればそうする程、ただ誤魔化してるだけのような気がして苛立つ。
何といったらいいか分からないような嫌悪感が湧いてきて、僕はこっそりカネダを見た。見たというより睨みつけるようだった。
本当に、自分は何してるんだろう。
いたたまれなくなって俯くと、タミヤ君が僕の方を見た。
「……ダフ、どうした?」
「う、ううん!何でもないよ」
「そっか」
そしてタミヤ君はニコって笑った。優しい顔だった。
でも、カネダにはどうせ、僕や他の人とは違う、別の種類の笑顔が向けられているんだろう。
なんでカネダなの。どうして僕じゃなくてカネダなの。
こんな事ばかり考えている自分が嫌で嫌でしょうがなかった。
生まれてからずっと仲良くしていた僕の親友たち。
その彼らが今、こんなに幸せそうにしている。
応援するべきだ。喜ぶべきだ。それなのにどうして、こんなに辛いんだろう。
そこまで考えて、僕はタミヤ君が好きだったんだと。
カネダに醜いくらい嫉妬する程、彼が欲しかったのだと思い至って。
僕はそっと、心の中で泣いた。
○
「っあ...あぁ、は...っ」
一度進んだコマは戻せない。
「...あ、あ、タミヤく...」
起きた事は変えられない。一生。絶対に。
「っつ...あ、――ッ!!」
ごめんなさい。
「...っは、はぁ...は......」
息を乱しながら、僕は僕の吐き出したモノをぼんやりと眺める。
ごめんなさいタミヤ君。
今夜も君で、僕の手を汚しました。
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63ばっかイチョイチョしててダフ不憫ww
と思っていたらもっとかわいそうなことになりました。
大丈夫。ダフは私が幸せにする……!←え
この後に、それに気づいててわざと...なゲスカネダというアイデアを頂いて書くか悩んでます。