ライチ短編

□花占い
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好き



嫌い



好き




嫌い






好き





「き、き、らい……」

これで何本目だろう。 
しゃがんでいた、足元にはピンク色の花びらがたくさん散り、中に茎が何本か混じっている。
花弁の全てちぎられた茎が、手の中で寂しげに揺れていた。
死んでしまった。花弁のない花なんて花じゃない。
みすぼらしいその姿が自分を写すようで、はあ、とため息が出た。

花占いなんて、馬鹿らしい。
所詮は遊びだ。こんなもので人の好き嫌いが左右されるはずないし。
第一、始める前に花びらの数を数えれば結果だって思い通りだ。



それなのに、どうして。

「…………っ」



どうして泣いているんだろう。

訳も分からずボタボタと落ちる涙が足元に落ちた花びらを濡らした。
そんなんじゃない、花占いのせいじゃない。
そう言い聞かせてはみるけれど、自分で言った「嫌い」の一言が胸を締め付けるようで。

もし、この占いが「好き」と告げていたならば、「たまたまだろ、そんなの」と苦笑いして、それでも少しほっとした気持ちでいられただろう。
でも現実は違って、この花は、このコスモスの花は、無表情のまま僕の思いを踏みつけていた。
冗談の遊びにすら見放されたという現実が妙に生々しく感じられて、辛い。

ああ、僕の悪い癖だ。 一つの出来事から、突拍子もないところへ悪い妄想が広がっていくんだ。
でも、花占いのとおり、タミヤ君は僕が好きじゃないのかもしれない。
幼馴染だから、仕方なく一緒にいてくれる。
幼馴染だから、僕が「好き」と言ったら仕方なく「俺も好きだ」と言ってくれるのかもしれない。

ああ、ああ、ダメだ。
誰かこの妄想を止めてください。



「カネダ?」
「っ!!?」

急に背後から声が聞こえて、肩が思わず震えた。
タミヤくんだ。
慌てて涙を拭う。こんな事で泣いたと知られたら呆れられかねない。
無理矢理笑って振り向く。 無論、顔は伏せ気味になってしまうけど。

「あは、タミヤ君、どうしたのこんなトコで……?」
「お前を探してたんだよ、早く帰……カネダ、泣いてんの?」


……バレるに決まってんじゃん僕のバカ。

「え、泣いてないよ。第一理由が……」
「カネダ」
「っ!」

タミヤ君は名前を呼ぶと、険しい顔をして僕の肩を掴んだ。

「目、腫れてる。どうしたんだよ?まさか、浜里に何かされたのか!?」
「ちが、ちがう。これは……その、」

理由なんか言えない。言えない。
必死に嘘の言い訳を考えていると、タミヤ君が視線を下にずらした。

「なにこれ、花びら?」
「あ、それは……」

どうしたらいいだろう。ジワジワと追い詰められるような気分が涙腺を緩ませた。
泣くな。 耐えろ自分。
やっぱり本当のことを言おう。簡単に流して終わりにしよう。

「……は、花占いしてた。泣いたのは別に何でもない、ホントだよ。ね、帰ろう」
「…………カネダ。俺ってそんなに信用ない?」
「えっ」

驚いてタミヤ君の顔を見る。 かっこいい顔が苦しげに歪んでいた。
ああ、そんな顔をさせてしまった。タミヤ君は悪くないのに。僕のせいなのに。
こういう時ばかりよく回転する頭の中。自己嫌悪が止まらない。
もういいや。正直に全部言おう。タミヤ君が傷つくくらいなら。


「……花占いでね、何回やっても「嫌い」が出るんだ」
「…………は?」
「あは……おかしいよね、呆れるよね、それは分かってる。でもね、怖いんだ、タミヤ君に嫌いって思われてるのは」
「なんで、俺がカネダを嫌いにならなきゃなんないんだよ」



ねえ、カネダ。 そう言ってタミヤ君はコスモスの花をひとつ取って僕に見せた。


「俺さ、つくづく思うんだけど、花占いって何で「好き」と「嫌い」の二つしかないのかな」
「……?」
「なんかさ、そういうもんじゃないと思うんだよな。だって、カネダは、全てに対して好きか嫌いしか感情はないのか?」
「違う、けど」
「人によって、その対象によっても、変わると思う、俺は……!」

そこまで言うと、タミヤ君は「なに俺はずかし!」とか叫んで、はにかんだ。

「俺のな、カネダへの花占いは、こうやってやんだよ」

「見てて」そうして彼は花の花瓶をつまんだ。




「……俺は」 一枚目。


「カネダが、」 二枚目。


「その……好きだし」 三枚目。


「可愛いと思うし」 四枚目。


「……いつも一緒にいたいし」 五枚目。


「キスだって、したい、し」 六枚目。


「……だから、つまり……」 七枚目。




くぐもった声で、いつもは見せない表情で。

タミヤ君は顔を染めながら最後の一枚をちぎった。




「愛してる、カネダ」




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書いてる本人が恥ずかしすぎて死んだのでストオォォォppppp!!!!!!!!!!
かゆいですね。前半はノリノリだったんですけども。
恥ずか死刑にされてきます……///

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