日和短編
□音に逃げる
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「ただいまでおまー!」
間の抜けた声を上げながら、太子は玄関の扉を開ける。
しかし、部屋の中からは声がしなかった。
「・・・あれ、おかしいな。曽良がいるはずなのに・・・」
不思議に思いながらリビングに入ると、曽良のうしろ姿があった。
本でも読んでいるのか、時々ページをめくる音が聞こえるだけで彼は俯いたままこちらに見向きもしない。
・・・いや、それだけじゃない。
耳をすますと、シャカシャカと小さな音が聞こえる。
彼の耳元に視線を移すと、案の定白いイヤホンが顔を出していた。
そうとう大きな音で聴いているのか、「曽良ー」と名前を読んでも気づかない。
いっそのこと、と彼から片方のイヤホンを引き抜くと「えっ」っと小さな声を上げて曽良が振り向いた。
「・・・あ・・・太子さん・・・お帰りなさい」
「ただいまでおま。耳悪くするぞ、こんな大きい音で」
「・・・大丈夫ですよ」
曽良の横に座り込んで、彼から引き抜いた曲が流れたままのイヤホンをしてみる。
激しいロック音にあわせて、外国人と思われる男が意味の解らない英語で歌い叫んでいた。
まるで曽良には合わない曲調に太子は思わず目を見張った。
「へえ、曽良ってこういう曲聞くんだ。もっと、こう・・・しっとりする曲とか聞くんだと思ってた」
「芭蕉さんにも言われたことあります、それ」
「ふふ・・・やっぱり。・・・ねえ、これ、洋楽だよな?」
「そうですけど」
「日本の曲とか聞かないのか?」
太子は、ミュージックプレーヤーのプレイリストを見ながらたずねた。
どれもこれも、英語で書かれた曲名に英語で書かれたアーティストの名前。
最近の邦楽でもこういうの多いけど・・・やっぱり洋楽にしかみえない。
「たまに。でも、洋楽の方が好きなんです」
「なんで?」
「僕、音楽を聴いてるときは何も考えたくないんです。だから、聴いてて意味の解かる邦楽は好きじゃないです。・・・嫌いでもないですけど」
「ふーん・・・・・・え、意味とか調べないの?歌詞とか」
「気に入った曲は歌えるようにもなりたいですし、和訳もたまにしてますよ」
「じゃあ、全部適当に聞き流してる訳じゃあないんだ」
「まあ・・・」
そのまま、流れる曲を聞き流してみた。
ああ、確かに、意味が解からない言葉を聞き流してみるのもいいかもしれない。
心が空っぽになるみたいに落ちつ・・・かない。
さすがにロックではテンションがあがってしまう。
そう思って次の曲にしてみた。
・・・ロックだ。
次も。次も。いくら飛ばしてみてもロックばっかりで、太子が「落ち着くな」とかんじる曲が何時までたっても見つからない。
スキップを押しすぎているのに不快を感じたのか、曽良が横から不満をもらした。
「ちょっと、何やってるんですか。次々曲変えないでくださいよ」
「ああ、ごめん。これってさ、ロックしかないの?」
「はい」
「・・・・・・・・・落ち着く?テンションあがらない?」
「・・・・・・貴方だけじゃないですか?」
すっと返される。
はたしてそうなのだろうか。
「曽良さ、何でロックすきなの?」
そう聞くとひと時の沈黙の後、はぁ・・・と痺れを切らしたかのようにため息をつかれた。
「さっきから質問ばっかりですね。読書妨害ですか?」
「え、いや・・・あれだよ。曽良のこと色々知りたいなー、なんてね」
「きもい」
「ひっど!ひど男だな曽良め!」
「・・・・・・僕・・・は・・・」
「・・・・・・?」
「僕はよく一人で居ますけど・・・別に、騒がしいのが嫌いな訳じゃ・・・ないんです・・・だから・・・」
曽良の声がだんだん口ごもるように小さくなる。
そういうことか。
太子は、そっと彼を抱き寄せた。
「・・・・・・そっか・・・」
寂しいんだね。
そこまでは、言わなかった。
☆
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うおお、太曽萌えるw
年とか、そういうものは考えてないのでとりあえず「現パロ」
かるーく過去ネタっぽいものを掠ってるのかなー。
家族に「なんで洋楽とかロックが好きなの?」って聞かれて
なんでだろう、って考えてたらいつの間にか太曽妄想になってました。
↓このままだと意味不明なので軽く説明を。
人と関わるのが苦手な曽良君。
・・・でも、一人は怖いんです。助けてくれー。
=(良い意味で)騒がしいロック。
見たいな感じです><
曽良君は心のどこかでSOS的なものを出してると異様に萌えますw
2/10 追記。
絵の練習も兼ねて挿絵っぽいものを投下してみました!
後から見ると「話関係ねえ!」って思いましたが…;
上の☆マークから飛びます。