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□夢じゃ、満たない
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――ふわり、と風が揺れる。キラキラと光るこの瞬きは何なのだろう。
自分は光の中にいるのだろうか。
視界がゆらゆらと揺れるが、不快感はない。むしろとても心地が良かった。
すると暖かい金色が、視界いっぱいに映る。その色を知っている気がして、手を伸ばした。
「……きょうや?」
――ふ、と意識が浮上する。
一瞬ここがどこだか分からなくて辺りを見回すと、そこは見知った応接室だ。
いつの間にか眠っていたのか、もう辺りは薄暗く、黒にほんの少しの赤を混ぜたような空が広がっている。
デスクにうつ伏せていたらしく、少々痛む首に手を当てながら、上体を起こす。
なんだかすごく幸せな、それでいて切ないような、漠然とした夢を見た気がする。
もうすでに夢の内容は思い出せないが、心に到来するなんともいえないこの虚無感は何なのだろう。
あれは…たぶん、ディーノの夢。もうすでに1ヶ月は会っていない、遠い異国の人。
(会えないのにこんな夢を見て、よけい会いたいという思いが募るだけなのに)