Main

□夢じゃ、満たない
1ページ/4ページ



――ふわり、と風が揺れる。キラキラと光るこの瞬きは何なのだろう。
自分は光の中にいるのだろうか。
視界がゆらゆらと揺れるが、不快感はない。むしろとても心地が良かった。
すると暖かい金色が、視界いっぱいに映る。その色を知っている気がして、手を伸ばした。


「……きょうや?」



――ふ、と意識が浮上する。

一瞬ここがどこだか分からなくて辺りを見回すと、そこは見知った応接室だ。
いつの間にか眠っていたのか、もう辺りは薄暗く、黒にほんの少しの赤を混ぜたような空が広がっている。
デスクにうつ伏せていたらしく、少々痛む首に手を当てながら、上体を起こす。

なんだかすごく幸せな、それでいて切ないような、漠然とした夢を見た気がする。
もうすでに夢の内容は思い出せないが、心に到来するなんともいえないこの虚無感は何なのだろう。


あれは…たぶん、ディーノの夢。もうすでに1ヶ月は会っていない、遠い異国の人。


(会えないのにこんな夢を見て、よけい会いたいという思いが募るだけなのに)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ