操花の花嫁 弐
□二巻 封印の王
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「え?
だって、何事もかたちから入った方がいいって多恵ちゃんが言ってたから……」
照れたように笑う華は可愛いのだが、話しが読めない男たちはそろってただ見つめることしか出来ないでいる。
もうすぐ夜が訪れようというのに、いったい華は何に着替えるつもりだろうかと、いけない夢がふくらんだ。
「それに……初めてだから……。」
顔を少し赤らめてうつむいた華の言葉に、空気がピシリと音をたてるようにうなる。
それに気付いた華が、さらに妄想をあおる言葉を吹きかけたのだから、たまったもんじゃなかった。
「あ…心配しないでください。初めてですけど……いつ、こういうことがあってもいいようにって、多恵ちゃんにちゃんと教えてもらってますから。」
「何をいうとるんじゃ!?」
貧血気味に倒れそうになった翔の代わりに、妄想を爆発させた悠が叫んだ。
「お…っおなごが、そんなこと口にするんじゃなか!!」
「………えっ?」
首をかしげた華に、視線が突き刺さる。
「それって…──」
はっと息をのんだ華の顔が、うるんだ瞳で悠を見上げた。
「──…私じゃダメだってことですか?」
ゴクリとのどを鳴らした悠を押しのけるように、翔が華の肩を強くつかむ。
じっと見つめてくる翔を華も黙って見つめ返した。
「華様……」
「翔、ごめんね……でも、私……」
ふいっと視線をそらした華に、翔がわずかに唇をかむ。
しかし、バツが悪そうに、
「いつも翔にしてもらってばかりいるし……」
と、肩を落とす華の姿でいっしんした。
「翔が、なんじゃ!?」
ひとり混乱しながら頭を抱えている悠の横で、成り行きを見守っていた三人がハッと白けた息を吐き出す。
「まぁ、こんなことやろぉと思てたけどねぇ。」
「華だからな。」
「華は、時々肝心な部分を飛ばしてしまうから話しがこじれる。」
まさしく火のごとく燃え盛る悠に、冷めた氷河の視線が向く。
内容を理解した翔に解放された華から少し距離を置いた場所で、悠が落ち着きなくたっていた。
「何しようかなぁ。」
「何するつもりじゃ!?」
「秘密に決まってるじゃないですか。」
「なしてじゃ!?」
「私でも満足してもらえるってことを証明したいからですよ。」
ほほを膨らませながらきっぱりと言い切った華に、悠がボンっと音をたてて大人しくなった。
その様子に気づいてるのか気づいてないのか、どちらにしろ華は悠を無視して光輝たちのもとに歩み寄っていく。
「光輝さんも遥さんも氷河さんも…その…やっぱり、私じゃダメでしょうか?」
うるうるとうるんだ瞳で見上げてくる華に、面とむかって"ダメ"だと言えるものは、もちろん一人として存在しない。
このお願いが、違うものであればよかったのにとため息がその場にこぼれ落ちた。
「…やっぱり……。」
ため息の意味を勘違いした華が、悲しそうに声を落とす。
その時、ふわりと光輝が優しげにほほ笑んだ。