お礼小説

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操花☆パロディ劇場

《シ ン デ レ ラ》



とある大きな屋敷には、草薙 華(クサナギ ハナ)という名の少女が住んでいる。
昔は、大富豪として名高かった草薙家も今や名ばかり。けれど、華は厳しくも優しい父・保(タモツ)と母・燕(ツバメ)、そして姉・翔(カケル)と共に、幸せに暮らしていた。

ところが!

父が病気で亡くなってしまうと、その広大な邸宅を手に入れるために御影(ミカゲ)家のものが押し寄せ、草薙家は奮闘むなしくも譲り渡すことになった。
父の残した家を守るため、母の燕は御影の当主と相討ち。その命までも落とさざるを得なかった。


「燕……ぅぅ。」


華は父と母を失った悲しみから、毎日泣いて暮らしていた。
しかし、この事件を機にガラリと一変してしまった生活は、そんな華を気遣ってはくれない。


「いつまでも泣いてんじゃないわよ!!」

「華様になんたる口の聞き方……分をわきまえよ!」

「うっさいわよ、翔!!母である、この御影多恵(ミカゲタエ)に逆らってんじゃないわよ!!」


そう。
草薙家は、見事なまでに御影家に乗っ取られ、家の実権は新しい母となった多恵が握ってしまった。

唯一残った肉親の姉は、可愛い華を全力でかばってくれるが、それも時間の問題。なんでもそつなくこなす翔のせいで、求められる家事の基準は簡単にあがっていく。


「ほら、掃除に洗濯、食事の準備に庭の手入れ!!無駄に広いんだから、さっさと働きなさい!」

「……はい。」

「華様、自分がやります。こんな無粋(ブスイ)な方の命令を華様が聞く必要なんて、どこにもありませんから。」


あくまでニッコリと、やんわりと、華の手に押しつけられていた雑巾を翔は奪っていく。が、その向こうに見える多恵の姿に、それは無理な相談だった。

やらなければ、殺される!?

いったいどこから手に入れてきたのか、その手に日本刀が握られている。すなわち、華の直感は、あながち間違ってはいないのだろう。


「翔くぅん?」


猫なで声の母は怖い。


「いつも、いつも、いっつ〜〜〜も、言ってると思うんだけど…───」

「…………。」

「───…あんたがそうやって華ちゃんを甘やかすから、この子は18にもなって、家事のひとつもまともに出来やしないんでしょうが!!」


屋敷のはるか上空を旋回(センカイ)していたペットの彰永丸(ショウエイマル)が、危険を察知して高く鳴いた。

その刹那、コンコンと扉を叩く音が響く。


「はいはぁい。」


言い争っている母と姉をその場に残して、華は来訪者をつげる玄関の扉をあけた。
そこには白馬……いや、真っ白い大きな犬に乗った異色の男がひとり。


「初めまして、預言の姫。敬(ケイ)と申します。今日は、ある方の命により、貴女様に招待状を届けに参りました。」

「……招待状?」


敬と名乗った金髪の男は、犬からおりるなり華に何かを手渡す。さっと膝まついて差し出された密書のようなものを華は目を瞬かせながら受け取った。

招待状というからには、どこかへ行かなくてはならないのだろう。
行かないという選択肢もあり得るだろうが、屋敷内に響きはじめた破壊音に、華の選択肢はひとつしか存在しない。


「今夜、お城で舞踏会が開かれるのです。3人の王子さまが、ぜひ貴女をと……。」

「私ですか?」

「国中の令嬢を招待することになっておりますので、草薙家の者として首席していただきたい。では。」


言うだけ言って去っていく敬を華はただ呆然と見送ることしか出来なかった。
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