薄桜鬼

□もしも現代物を渡してみたら
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「さっぱりわかんねぇな。」

「新八っつぁんは、何も考えてねぇじゃん!」

「んだと!?なら、平助。これが何かわかるってのか?」

うっと言葉に詰まった平助をよそに、4つの束に分けられた紙たちを見つめる。

「これは、どこに入るんですかねぇ?」

一枚だけ、どこにも分類することの出来ない紙を眺めながら沖田が呟いた。

「興味なくなるのが早ぇよ。」

原田が苦笑する。が、考えててもわかるものでもなく、

「千鶴ちゃんにあげようかなぁ。」

と沖田が腰をあげた。

「待て。」

止めるのは、斎藤。

「それは、俺が手に入れたものだ。」

預かったんじゃなかったっけ?と、首を傾げていた平助は、

「だって、こんな珍しいものあげたら、千鶴ちゃん、きっと喜ぶと思うな。」

と、笑う沖田にハッと気付く。

「んじゃ、俺も千鶴に渡す!」

意気揚々と手を伸ばした平助に、

「千鶴に似合うのは、これだろ。」

と、原田が赤い桃が1つだけ描かれた紙に口付けた。

「桃が?」

平助の訝しげな声に、

「いや、尻じゃねぇのか?」

と、バカな新八の声。

「わかってねぇなぁ。
女は、こういう形が好きなんだよ。」

不敵に笑う原田の手からスルリと紙が引き抜かれれば、

「まっ、千鶴には代表して俺が渡してやるよ。」

と土方が部屋から幹部を追い出そうとする。

「ちょっと。千鶴ちゃんに渡すのは僕だよ。」

「バカ言え。俺が選んだんだぜ?」

「ずっりぃ。俺も千鶴にあげたい〜。」

「………。」

ギャーギャーと一枚の紙を奪いあう4人を前に斎藤の手が腰の刀に伸びる。

「さ…斎藤!?とりあえず、落ち着けって!なっ。」

それに気付いた新八が慌てて斎藤を止めるが、すでに聞く耳を持っていない。

「千鶴は、俺のだ。」

怒りのあまりに呟いた斎藤の声は、

「あれ?みなさんお揃いで。何をなさってるんですか?」

と言う千鶴の声にかき消される。

「土方さん。頼まれていたものここに置いておきますね。」

繕ったばかりの着物を起きながら土方に微笑みかける千鶴には、取っ組み合ったまま固まる彼らがどう見えるのだろうか。

「みなさん、本当に仲がよろしいですね。」

クスクスと笑う千鶴に、「はぁ」やら「へっ?」と言った思い思いの表現で返す彼ら。

「あっ。」

千鶴が沖田が捨てたと見られるどこにも属すことない一枚の紙を拾い上げた。

「"とらんぷ"ですね。」

「「「「「「とらんぷ!?」」」」」」
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